研究課題/領域番号 |
19K14639
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
素川 靖司 分子科学研究所, 光分子科学研究領域, 助教 (70768556)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 人工ゲージ場 / 冷却原子 / ボース・アインシュタイン凝縮体 / 光格子 / 量子制御 |
研究実績の概要 |
「バルク・エッジ対応」で良く知られているようにトポロジカル物性においては、界面やエッジが重要な役割を果たしている。一方で、一般的な手法を用いて実現した冷却原子系においては、緩やかなポテンシャル中に原子集団が閉じ込めるため、明確な境界面は存在していない。本研究ではレーザー光の空間モードをエンジニアリングすることにより、冷却原子集団に対して空間的なエッジを創り出して、実空間においてトポロジカルなカイラルエッジ状態を誘起・観測することを目指している。平成31年度は、そのために、1)ルビジウム原子のボース・アインシュタイン凝縮体の生成に向けて、レーザー冷却装置の開発に取り組み、マイクロ・ケルビンのオーダーにまで冷却・捕捉された磁気光学トラップ中のルビジウム原子集団を、近赤外光ファイバーレーザーを用いた光双極子トラップに移行・捕捉することに成功した。2)極低温原子集団を制御するための狭線幅レーザー光として、波長770nmの光源を、PPLN導波路を用いた第2高調波発生によって得るシステムを組んだ。高い変換効率で第2高調波発生が実現できており、光ファイバーアンプによって基本波の光強度を増幅することで、十分な出力を得られることが分かった。3) カイラルエッジ状態を効果的に誘起するために、実空間中において明瞭なエッジを形成できるような光ポテンシャルをRb原子に対して形成する必要がある。そのために、新しい光トラップ系を構築する準備を進めた。空間的に鋭い光ポテンシャルを形成できるように、集光面でリング状の光強度分布をもつ光学系を設計し、評価用の光学系を組んで光強度分布を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ルビジウム原子のボース・アインシュタイン凝縮体の生成に向けて、装置の開発に取り組み、磁気光学トラップに捕捉された原子集団を、近赤外光ファイバーレーザーを用いた光双極子トラップ中に捕捉することに成功した。今後、捕獲効率と蒸発冷却の最適化を進めることで、ボース・アインシュタイン凝縮体を生成できる。これにより、本研究を進める上で必要な実験プラットフォームが完成する。極低温原子集団をレーザーによって制御するために、PPLN導波路を用いた第2高調波発生によって波長770nmの狭線幅光を得ることできる光学システムを組み、高い変換効率で第2高調波発生が実現できていることが確認できた。今後、光ファイバーアンプによって基本波の光強度を増幅することで、十分な出力が得られる見通しが立った。さらに、カイラルエッジ状態を効果的に誘起できるように、リング型の斥力ポテンシャルを光トラップで形成する準備を進めた。評価用の光学系を組んで、リング状の光強度分布を形成することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
人工ゲージ場中の極低温中性原子集団に対して、カイラルエッジ状態を誘起して、観測・制御することを目指す。光トラップ中の蒸発冷却によって、ルビジウム原子のボース・アインシュタイン凝縮体を生成する。初期原子数として十分な数の原子を磁気光学トラップに捕捉できており、移行効率と蒸発冷却の最適化を進めることで、ボース・アインシュタイン凝縮体を生成できると期待される。ボース・アインシュタイン凝縮体を光格子に導入して、中性Rb原子に対して人工ゲージ場を印加する。カイラルエッジ状態を効果的に誘起できるように、RbのD1、D2線に対して青方離調となる770nmの光源を用いて、空間モードをエンジニアリングした光トラップに原子集団を導入する。
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次年度使用額が生じた理由 |
空間光位相変調器の仕様、光学系の設計を変更したため。次年度使用分は新たに構築する光学系に必要な物品購入に使用する。
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