研究課題/領域番号 |
19K14643
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
仲村 愛 東北大学, 金属材料研究所, 助教 (30756771)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 単結晶育成 / フェルミ面 |
研究実績の概要 |
Ce化合物のCe原子価数は3価または4価をとり、3価の場合は磁気秩序を起こし、4価は非磁性となる。3価と4価でのフェルミ面は、それぞれLa化合物とTh化合物が参照物質となっている。また、重い電子系Ce化合物だと3価と4価の中間価数状態であることが知られているが、中間価数状態でのフェルミ面はまだ明らかにされていない。 著者はこれまでに、50年以上前に重い電子系物質として報告されたCeAl3と同じ結晶構造をもつThAl3の単結晶育成に成功し、電気抵抗、比熱およびドハース・ファンアルフェン効果の実験を行なった。さらに、共同研究者の協力を得てエネルギーバンド計算との比較も行い、フェルミ面の詳細な形状を明らかにすることに成功した。また、これらの結果からは、ThCu2Si2と同様に、5f電子の部分状態密度がフェルミ面に寄与していることが示唆された。 一方で、CeAl3は現在までにフェルミ面を明らかにされておらず、その理由はCeとAlの2元系状態図から結晶育成が困難であることがあげられる。同じ理由でLaAl3も育成困難である。著者は、4価のThAl3のフェルミ面との比較のために、3価で同じ結晶構造をもつGdAl3の単結晶育成を試みたところ、純良な単結晶を得ることができた。電気抵抗の温度依存性から、室温から温度下降とともに金属的な振る舞いをし、17.5 Kで磁気秩序に伴う急激な減少を示すことがわかった。また、純良性の目安となる残留抵抗および残留抵抗比は0.3μΩ・cmおよび54であった。今後はその単結晶試料を用いて、フェルミ面を明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2021年度は5月から1日2時間の育児部分休業を取得していること、また子の看病等で休んだことも多く、研究できる時間が限られており当初予定よりも遅れている。2022年度も同じ状況が考えられるので、限られた時間の中でできることを再検討する必要がある。 単結晶育成については時間を要するうえに化合物によっては育成が難しい可能性もあるため、育成方法をいくつも試行錯誤したり様々な化合物の作成を試みたりすることが望ましい。しかしながら、活動時間が限られているため、2021年度に引き続き育成方法が確立されている物質や比較的容易に育成できそうな化合物に絞って、試料の評価や物性測定を進める。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度に引き続き、トリウム化合物のフェルミ面と超伝導特性について明らかにするために、トリウム化合物の単結晶育成について取り組む。具体的には以下の内容で進めていく。 (1)まずは育成方法が確立されている物質を対象に育成を試みる。具体的には、ThT2(Si, Ge)2、ThT(In, Ga)5 (T: 遷移金属)等の物質をGa、In、Sn、Pb、Sb、Biの低融点金属を用いたフラックス法での育成を試みる。すでにThCu2Si2の純良単結晶の育成に成功しているため期待できる。 (2)可能な限り並行して育成方法が確立されていない物質についても取りかかる。引き続き、ZrNiAl型などの結晶構造に着目したトリウム化合物も育成を試みる。 上記で育成に成功した単結晶試料は、それぞれX線回折測定装置を用いて構造解析で評価し、電気抵抗、比熱、磁化、ドハース・ファンアルフェン効果の実験などの物性測定を行う。さらに、必要があれば高圧力下での実験や神戸大学の播磨尚朝教授の協力を得てバンド計算との比較を行い詳細な電子状態を明らかにする。これまでの経験を生かし、また東北大学金属材料研究所の青木大教授の研究グループの協力を得て研究を進めていく。本研究で明らかになったことは、国内外の研究者との議論、国内での学会発表や国際会議、論文発表などでアウトプットする。
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次年度使用額が生じた理由 |
先に記述した通り、2021年度は育児部分休業を取得していること、子の看病等で休んだことで、予定よりも研究できる時間が短かった。そのため、結晶育成に使用する金属原料や石英管などの消耗品のための物品費が残っている。また、国内外でのコロナ感染症の拡大ということもあり学会等がオンライン開催となったことや、国内外への出張が難しいためにその旅費等が残っている。 2022年度は、単結晶育成で使用する金属原料、るつぼ、石英ガラスはもちろん物性測定で必要なヘリウムガス、測定機器の調整などの物品費に使用する。また、学会・研究会での参加費や旅費、論文投稿費用などに使用する予定である。
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