研究実績の概要 |
Ce化合物のCeの原子価数は3価または4価をとることが知られており、それぞれの価数の場合にLa化合物とTh化合物が参照物質となることが多い。そして、化合物の価数などの電子状態を明らかにするために、フェルミ面を明らかにすることは重要な手段の1つであり、これまで対象物質とその参照物質のそれぞれのフェルミ面を比較することによって電子状態を議論されてきた。ただし、重い電子系Ce化合物だと3価と4価の中間価数状態であることが知られているが、中間価数状態でのフェルミ面を明らかにされた例は極めて少ない。 50年以上前に重い電子系物質として報告されたCeAl3は、CeとAlの2元系状態図から結晶育成が困難であるために現在までにフェルミ面を明らかにされていない。同じ理由でLaAl3も育成困難となっている。本研究ではCeAl3の3価と4価の参照物質として、それぞれGdAl3とThAl3を選びそのフェルミ面を比較することを試みた。GdAl3は、ネール温度が約18 Kの反強磁性体で、過去の報告から伝播ベクトルk=(0, 0, 0)であることが提唱されていることから磁気秩序相内でもフェルミ面が変わらないため、フェルミ面の比較に適した物質である。 それぞれの化合物についてAl自己フラックス法を用いて単結晶の育成に成功した。その育成された単結晶試料で電気抵抗、比熱およびドハース・ファンアルフェン効果の実験、さらにエネルギーバンド計算との比較を行いフェルミ面の詳細な形状を議論した。本研究の結果から、GdAl3とThAl3のフェルミ面の形状は大きく異なることが明らかになった。つまり、この系では3価と4価ではフェルミ面が大きく変わっている可能性が示唆される。これは、CeCu2Si2系でのLaCu2Si2(3価)とThCu2Si2(4価)のフェルミ面の変化に比べて、かなり大きな変化となっていることがわかった。
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