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2020 年度 実施状況報告書

量子スピン液体における磁場励起ダイナミクスと輸送現象に関する数値的研究

研究課題

研究課題/領域番号 19K14645
研究機関東京大学

研究代表者

井戸 康太  東京大学, 物性研究所, 助教 (50827251)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードスピン液体 / 磁性 / 変分モンテカルロ法 / 物性理論
研究実績の概要

本研究の目的は、大きな系に適用可能な高精度変分モンテカルロ法(VMC)の開発・適用により、拡張されたKitaev模型などで発現する量子スピン液体の安定性とスピンダイナミクスを理論的に解明することである。本年度は以下の研究成果を得た。

(1)VMC法で用いる変分波動関数の改良:フラストレーションのある強相関電子系の基底状態を効率的かつ高精度に求めることを目指し、VMC法で用いる試行波動関数の改良を行った。本目的を達成するために、我々は局所的な電子密度に依存したペアリング波動関数を考案した。ベンチマークとして、我々の提案した波動関数をフラストレーションの強い正方格子および三角格子上のハバード模型の基底状態解析に適用した。その結果、我々の提案した波動関数は従来のペアリング波動関数と比べて高精度に基底状態を計算できることを見出した。また、制限ボルツマンマシン型の相関因子とPower Lanczos法を組み合わせたvariacne外挿を行うことで、高精度な基底状態解析を行えることを示した。

(2)分子性固体β’-Pd(dmit)2塩における量子スピン液体:スピン液体候補物質として注目されている分子性固体β’-Pd(dmit)2塩の有効HamiltonianをVMC法で解析した。制限ボルツマンマシンとPower Lanczos法に基づいたvariance外挿の結果、カチオンがEtMe3Sbの場合、非磁性相が磁性相よりも安定であることがわかった。スピン相関関数などの物理量の解析から、我々が得た基底状態はspin gapless励起を有する量子スピン液体であることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

高精度な取り扱いが難しい強いフラストレーションを有する強相関電子系を解析できるよう、試行波動関数を改良することができた。また、本試行波動関数を用いて、量子スピン液体におけるスピンダイナミクス・輸送特性という観点から、スピン液体が発現すると考えられている分子性固体の有効Hamiltonianを解析することができた。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断する。

今後の研究の推進方策

分子性固体の有効Hamiltonianを解析して得られたスピン液体状態の輸送特性をより詳細に解析していく。また、様々な量子スピン系へ柔軟に適用することのできる制限ボルツマンマシンとペアリング波動関数を組み合わせた試行波動関数を用いて、拡張Kitaev模型の基底状態及び輸送特性についても解析する。

次年度使用額が生じた理由

今年度はコロナ禍の影響で国内・国外旅費を使用できなかった。次年度の状況にもよるが、可能であれば国内外の会議・研究会へ積極的に参加する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)

  • [学会発表] Pd(dmit)2塩の第一原理ハミルトニアンにおける量子スピン液体の安定性2021

    • 著者名/発表者名
      井戸 康太, 吉見 一慶, 三澤 貴宏, 今田 正俊
    • 学会等名
      日本物理学会 第76回年次大会
  • [学会発表] 変分モンテカルロ法を用いた強相関電子系における動的構造因子の計算法2020

    • 著者名/発表者名
      井戸康太
    • 学会等名
      物性研究所スパコン共同利用・CCMS合同研究会「計算物質科学の新展開2020」
    • 招待講演
  • [学会発表] Variational Monte Carlo method for excitation spectra in strongly correlated electron systems2020

    • 著者名/発表者名
      Kota Ido
    • 学会等名
      Emergence and Functionality of Quantum Matter 2020
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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