研究実績の概要 |
鉄カルコゲナイドFe(Se,Te),Fe(Se,S)の超伝導特性を明らかにするために,本年度はマイクロ波の手法を用いて,Fe(Se,Te)薄膜の高周波伝導度・磁場侵入長を測定した測定を行った.まず,薄膜をコプレーナ型の伝送線共振器に加工し,低温での共振特性を測定することで超伝導体薄膜試料の磁場侵入長測定を行った.この手法は,磁場侵入長の絶対値が得られるという利点がある.当初はサンドブラストによる試料加工を行っていたが,測定精度は共振器の加工精度に敏感であることがわかり,試行錯誤の結果,金属マスクを用いてArイオンミリングすることで,十分な加工精度が得られることがわかった.Te50%置換した薄膜は,バルク試料と同程度の侵入長を示し,また,Te量を20%程度まで減らしても大きく磁場侵入長は変化しないことがわかった.今後は構造相転移を示すTe量が0%-10%の試料の測定を行い,電子ネマティック秩序の超伝導に対する役割を明らかにする予定である.これと同時に,マイクロ波伝導度測定装置の開発も行った.薄膜試料の場合,侵入長が温度変化することによる電磁場分布の変化が結果に大きく影響してしまうことがわかった.現在,超伝導転移温度より十分低温の領域でのマイクロ波伝導度の評価に成功しており,構造相転移を示すTe10%置換試料とそれ以上の置換量の試料で散乱時間の温度変化が大きく異なるという結果が得られている.これが何を意味するのかを今後明らかにしたい.
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