鉄カルコゲナイド超伝導体FeSeは超伝導転移温度Tcが低いものの,様々な方法でTcを大幅に上昇させることができ,さらなるTcの向上や実用化を目指し,超伝導メカニズム解明に向けて精力的に研究がなされている.FeSeは静水圧下でTcが4倍程度に増大するが,元素置換による格子の圧縮(化学圧力)ではTcの上昇は見られない.磁気的なゆらぎが超伝導の重要因子の一つだと考えられているが,本研究により,物理圧力と同様に化学圧力でも磁気秩序が誘起されることが明らかになった.今後この磁気秩序を詳しく調べることで物理圧力と化学圧力でのTcの違いを明らかにし,この物質のTc上昇のメカニズムを解明できる可能性がある.
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