研究課題/領域番号 |
19K14652
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 英史 大阪大学, 基礎工学研究科, 助教 (50748473)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 熱電効果 / 極性金属 / 超伝導 / 遷移金属カルコゲナイド / 音響電気効果 |
研究実績の概要 |
本研究では分極ゆらぎやソフトフ ォノンと伝導電子との相関による高い熱電性能のメカニズムの解明とともに、この相関を用いたエキゾチックな超伝導のような新奇な量子輸送現象や新機能の開拓を目指し研究を行った。MoTe2の低温で観測された高い熱電性能の起源として、250Kでの極性構造相転移の揺らぎに起因したフォノンのソフト化によると予想されたため、このソフトフォノンの観測を目指し、常圧下でのラマン散乱の温度依存性の測定を行った。その結果、250K付近の構造相転移に起因した、フォノンスペクトルの変化以外に、250Kから温度を下げることで連続的にソフト化するフォノンの観測に成功した。さらにこのフォノンは70 K付近から低温に向かってハード化することも明らかとなった。この結果は、70K付近で弱い構造変化が生じていることを示唆する結果であり、高い熱電性能がこの構造変化の揺らぎに起因している可能性がある。さらに、本研究では極性と非極性構造の不安定性を持つ金属材料の単結晶合成を行い、1×1×1mm3以上のサイズをもつ大型単結晶の作成に成功している。さらに、この材料において、磁性イオンを導入することで、非自明なホール効果(トポロジカルホール効果)が観測された。この結果から、磁性イオンの持つスピンによる特異な磁気秩序の発現が示唆された。さらに、極性構造に由来した新現象開拓として、音響電気効果の観測を目指し実験手法の開発を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、フォノンと伝導電子の相互作用に起因した高い熱電性能の起源と新たな材料開拓を目指した研究を行っている。今年度は、単結晶のラマン分光測定から、低温においてソフト化するフォノンを観測することに成功し、これが高い熱電性能に関係している可能性を示唆する結果を得た。さらに新たな材料の大型単結晶の合成にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、MoTe2のラマン分光測定から、低温でフォノンがソフト化することが明らかになった。そこでこのソフト化に起因した構造変化を放射光を用いた単結晶構造解析から明らかにする予定である。さらに高圧化ラマン測定を行い、高圧による熱電性能増大の起源を探る。また、新たに合成した単結晶においても、熱電性能の測定を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響により、参加予定の学会が中止になったため。来年度の学会の旅費に使用する予定である。
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