研究実績の概要 |
近年、電流と磁化の間で生じる新たな電気磁気効果に注目が集まっている。本研究では、反転対称性が破れた反強磁性体CaMn2Bi2及びその元素置換系の磁場中輸送特性及び二色性伝導を測定、評価することで、新たな知見を得ることを目的としている。 2020年度は、前年度から引き続き、温度を変化させながらCaMn2Bi2の電気抵抗と二色性伝導の同時測定を行った。これまでに、反強磁性転移点付近で二色性伝導の温度依存性に非単調な変化が観測されていたが、熱電測定を合わせて考察を行った結果、これは電流によって生じたジュール熱の影響であることが明らかになった。一方、低温まで測定を行った結果、ジュール熱の影響では説明できない二色性伝導の上昇を観測した。しかし、この振る舞いには試料依存性があることも分かり、ランダムな磁気ドメイン形成による影響もしくは不純物などの外因的な要因がその起源として考えられる。今後更なる検証が必要である。 また、CaMn2Bi2は微細加工に対する耐性が低いことが分かってきたので、新規物質探索を行った。結晶及び磁気構造が決定されている物質の中から、二色性伝導が生じる条件を満たすものの探索を行った。特に、磁性元素が2つ含まれる物質に着目し、結果的にLnMnSbO及びLnMnSb2(Ln = Ce, Pr)の単結晶を得ることができた。これまで単結晶を用いた測定が為されていなかった物質であるため、基礎物性測定を行った。その結果、LnMnSbO(Ln = Ce, Pr)は共に絶縁体的な輸送特性を示すことが分かった。一方、LnMnSb2(Ln = Ce, Pr)に関しては、金属的な電気抵抗を観測し、さらに磁場によってメタ磁性転移を示すことが分かった。今後、本系における電気磁気効果の検証を行っていく。
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