本研究では、新たな高温超伝導体を見出すことを目的に、硫黄と同族のカルコゲンであるセレンの水素化合物の合成と物性測定による超伝導探索を行った。圧力発生装置であるダイヤモンドアンビルセル内に封入した単体セレンと水素に赤外レーザーを入射することで水素化セレンを高温高圧合成し、圧力誘起分子解離を防ぐため低温で150 GPaまで加圧した。この圧力で電気抵抗の温度依存性を測定したところ、30 K、20 K付近に抵抗値の急峻な減少が見られた。この合成試料の結晶構造は明らかではないが、電気抵抗の減少は低温加圧で得られる硫化水素のlow-Tc相に相当する、セレン水素化合物の超伝導相を観測したものと考えられる。
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