研究実績の概要 |
新規Ce系近似結晶・準結晶の探索については主にAu-Ga-Ce系Tsai型近似結晶を対象とした。組成領域の探索を行った結果、1/1近似結晶についてはAu/Ga比および(Au,Ga)/Ce比に対して非常に広い単相領域を持つことが明らかになった。そこで化学的圧力の印加を期待し、これらの系に対し磁化率・比熱測定を行った。しかしながら、いずれの系も2 Kまでの磁化測定では異常を示さず、また0.5 Kまでの比熱測定ではAu/Ga比および(Au,Ga)/Ce比によらずほとんど同じ比熱の温度依存性を示した。さらにこの比熱の振る舞いは先行研究にて報告されていたAg-In-Ce系1/1近似結晶とほぼ同一のものであり、系・組成によらず全く同一の温度依存性を示している。磁場中測定では比熱で見られたピークが高温側へとシフトしていくことから、系はAg-In-Ce系1/1近似結晶と同様にスピングラス状態になっているものと考えられる。これまでTsai型1/1近似結晶系はA6RE系(A:金属,RE:希土類)のAサイトに2種の元素を用いることで物質探索が行われてきた。本研究の対象としたAu-Ga-Ce系はAサイトにAuとGaの2種元素を用いているものとみなせることから、こうした構造が単相領域の広さにつながり、またそれに由来する乱れにより、系のスピングラス化を招いているものと考えられる。 ホウ素の7員環を用いた新規準結晶の探索については、まずRE, Al, Bのアーク溶解を試みたが、系は合金化しなかった。また原料をそのまま高周波溶解し、箔体急冷することも試みたが、系はアモルファス化してしまい、本課題に適合する有意な構造は得られなかった。そのため、大量の母合金を得るための別の手法として、ブリッジマン法を用いるべく、ブリッジマン炉の立ち上げを行った。
|