研究課題/領域番号 |
19K14666
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
村井 直樹 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究員 (90784223)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 非従来型超伝導体 / 非弾性中性子散乱 / 非弾性X線散乱 / スピン揺らぎ / フォノン |
研究実績の概要 |
鉄系超伝導体のスピン揺らぎ、格子ダイナミクスの研究を行なった。 まず前者については、ホールドープ型BaFe2As2を対象にJ-PARCのパルス中性子分光装置を用いた非弾性中性子散乱実験を行なった。その結果、(1): スピン揺らぎが顕著な3次元的変調構造を有する、(2): 超伝導状態において観測されるスピンレゾナンスモードが2つのピーク構造を有する、という2点を発見した。理論グループとの共同研究を通して、(1)は3次元的電子構造、(2)は鉄系超伝導体のマルチギャップ構造に対応する事を明らかにした。二体相関関数の解析を通して、エネルギーバンド構造やフェルミ面のネスティングなどの基本的な情報の抽出が可能となることが本研究から示された。 格子ダイナミクスの研究として、鉄系超伝導体FeSeのフォノン分散測定をSPring-8の高分解能非弾性X線散乱装置を用いて行なった。実験的に決定したFeSeのフォノン分散を密度汎関数摂動理論(DFPT)による第一原理計算と比較したところ、非常に大きな不一致が見られた。この不一致は磁気秩序状態におけるDFPTフォノン計算を行う事によって解消される事を明らかにした。FeSeは磁気秩序を示さない系であるため、常磁性相のlocal momentの影響がフォノン側に強く現れている事を示唆する結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スピン揺らぎの研究に関しては、中性子散乱実験とその解析がほぼ完了しており、現在、論文執筆を行なっている。また、フォノン測定に関する結果に関しては十分な成果が得られ、初年度中に論文の出版まで至った。研究計画通りの成果が出たということを鑑みると、”(2) おおむね順調に進展している”の評価が妥当である。
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今後の研究の推進方策 |
反強磁性相と超伝導が共存する領域の中性子散乱実験を行い、磁性と超伝導が絡み合う境界領域の研究を進める。また、フォノンへの磁性の寄与を更に理解するため、フォノンの線幅の精密な決定と第一原理計算との比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
[次年度使用額が生じた理由]:令和元年度中に実施を予定していた解析プロブラムの整備に若干遅れが生じたため、必要となるソフトウェアの購入が遅れた。 [使用計画]: 開発が遅れた解析プログラムの整備のため、必要となるコンパイラ等のソフトウェアを購入する。
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