鉄系超伝導体における高温超伝導の発見は超伝導研究の新しい潮流を生み出したと言える.鉄系超伝導体で観測される特異な物性は,スピン,軌道,格子の自由度の相互作用によって生じる.このような複雑な相互作用がどのように鉄系超伝導体の特異な電子状態を生み出すのかは非常に興味深い課題である.本研究では,X線・中性子の非弾性分光技術を駆使することで,鉄系超伝導体のスピン・格子自由度の動的な側面に焦点を当てた研究を行った.その結果、(1)フォノン分散における磁性の寄与,(2)動的スピン帯磁率の3次元強度変調とフェルミ面ネスティングとの関連,(3)中性子散乱スペクトルに現れるマルチギャップの観測,を明らかにした.
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