研究課題/領域番号 |
19K14671
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 伸一 東京大学, 地震研究所, 助教 (10756331)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 破壊 / 乾燥亀裂 / 不均一性 / フェーズフィールドモデル |
研究実績の概要 |
本研究は水と粉体の混合ペーストの乾燥破壊現象において、亀裂の進展に影響する物性値空間不均一性を計測データと数値モデルの比較により定量的に評価するための基盤技術の開発を目的としている。2年目である本年度は、乾燥破壊実験を主として実施した。質量計の上に設置したアクリル容器の中で、水と粉体の混合ペーストを乾燥させ、乾燥亀裂パターンのインターバル撮影を行ない、画像の時系列データを取得する。さらに本年度からは、ペースト表面の変位場を測定する試みを追加で実施した。亀裂場だけでなく変位場もデータとして取得することができれば、よりロバストな物性値空間不均一性の推定・評価が可能になると期待できるためである。本研究では、ペースト表面に小さなマーカー粒子を散布し、異なる2時刻の写真対からPIV(粒子画像流速測定法)により変位場を測定することを検討した。しかしながら、通常のPIVは流体の連続な流れ場の測定に利用されるものであり、本研究の対象の写真のように亀裂部分で画像の不連続性を含む画像にそのままPIVを適用しても変位場を精度よく抽出することが難しい。そのため本年度は、様々な実験条件・様々な種類のマーカー粒子を用いた実験を試行錯誤的に実施したほか、PIVのアルゴリズムにも修正を加えたことで、亀裂を含む画像であっても精度の良い変位場の抽出が可能となった。この変位場データは次年度以降の研究で利用し、本研究の目的達成において重要な鍵となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度はシミュレーションモデルの構築を行ない、本年度は実験データの拡充を行なった。モデルとデータの両者が成熟してきており、研究の進捗は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きモデルの高度化とデータ拡充を続けていくが、モデルとデータが順調に成熟してきているため、最終段階であるデータ同化のアルゴリズム開発へ移行する。モデルが大規模であるため、これまでに自身が開発してきたデータ同化アルゴリズムだけでなく、新規アルゴリズムの導入・開発も視野に入れて目的達成のために研究を推進する。本計画で得られた結果は速やかに学会・研究集会等で公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年5月現在、COVID-19の影響により国内外問わず学会・研究集会がオンライン化し、計画していた出張にかかる費用が使用されていないため、主に旅費の次年度使用額が発生している。次年度は大規模データ同化を実施するため、その計算のための計算機等へ予算を計上する。
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