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2019 年度 実施状況報告書

ソフトマターの亀裂進展における速度ジャンプのメカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K14672
研究機関東京大学

研究代表者

作道 直幸  東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任研究員 (50635555)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード速度ジャンプ / 破壊力学 / 可解モデル
研究実績の概要

本年度の成果は、大きく分けて以下の5つである。
1. ゴムの亀裂進展速度ジャンプのメカニズムに関して、数値シミュレーションや実験からの基礎付けを行った。研究代表者が考案した理論モデルは大幅な単純化をしている。この単純化によって速度ジャンプの本質は損なわれないことを正当化するために、他の研究グループと共同で、有限要素法(FEM)による速度ジャンプの数値シミュレーションとの比較を行った。FEMにおける速度ジャンプのメカニズムと我々の提案するメカニズムとの関係はしばらく不明であったが、共同研究の結果、両者のメカニズムを統一的に理解することに成功した。また、これを裏付けるためにフィラーを含まないゴムによる実験も行い、理論と整合的であることを確かめた。結果は原著論文にまとめ、国際誌に投稿した。
2. 速度ジャンプ以前の亀裂が進展の開始条件について、数理的に新しい結果を得た。具体的には、二次元正方格子構造における応力集中による破壊の開始条件を表す、新しい解析的な表式を発見した。結果について学会発表を行った。
3. 速度ジャンプが生体材料でも起こるのではないかというアイデアの元、他大学と共同で理論研究を開始した。最近、実際に生体材料をシート状にした破壊試験が行われていることがわかり、これと理論の比較を行っている。
4. 高分子ゲルの亀裂進展挙動に関する実験研究を行った。結果として、高分子網目の均一性が極めて高い高分子ゲルにおいては、速度ジャンプが生じないという予備的な結果を得た。
5. 高分子ゲルの亀裂進展挙動を研究するために不可欠である、弾性率や浸透圧などの基礎的な物性パラメータについて、理解・予測するための基礎的な方程式を、実験結果に基づいて明らかにした。結果について、原著論文2報が国際雑誌に掲載済みであり、この内1報は雑誌バックカバーに選ばれた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究実績の概要に記載の通り、本年度は大きく分けて5つの方向性の研究を行った。ゴムの亀裂進展速度ジャンプのメカニズムに関して数値シミュレーションや実験からの基礎付けを行う研究、二次元正方格子構造における応力集中による破壊の開始条件の研究、生体シート材料における速度ジャンプの研究、高分子ゲルの亀裂進展挙動に関する研究、高分子ゲルの基礎的な物性パラメータの研究、の5つである。本年度は、原著論文2本が国際誌に掲載され、内1報は雑誌バックカバーに選ばれた。また、研究代表者が執筆した書籍が出版され、11件の学会発表を行った。このように、研究はおおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今年度は、新型コロナウイルス感染症の拡大により4月7日に緊急事態宣言が発令され、在宅勤務を余儀なくされている。シミュレーションや実験を伴う研究を行うためには、緊急事態宣言が解除される必要があるが、2020年5月末の段階で東京都は緊急事態宣言が解除されておらず、また、今後の解除の見通しがたっていない。従って、今年度は解析計算でできる範囲の研究を進めることと、本年度の研究成果を原著論文にまとめることに専念する。具体的には、二次元正方格子構造における応力集中による破壊の開始条件の研究、生体シート材料における速度ジャンプの研究、高分子ゲルの亀裂進展挙動に関する研究、高分子ゲルの基礎的な物性パラメータの研究、の4つについて、原著論文を執筆する。また、二段階の速度ジャンプを説明する理論モデルを構築することと非線形弾性によるタフ化メカニズムを明らかにする。

  • 研究成果

    (15件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Connectivity dependence of gelation and elasticity in AB-type polymerization: An experimental comparison of dynamic process and stoichiometrically imbalanced mixing2019

    • 著者名/発表者名
      Yuki Yoshikawa, Naoyuki Sakumichi, Ung-il Chung, and Takamasa Sakai
    • 雑誌名

      Soft Matter

      巻: 15 ページ: 5017-5025

    • DOI

      https://doi.org/10.1039/C9SM00696F

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Shear Modulus Dependence of the Diffusion Coefficient of the Polymer Network2019

    • 著者名/発表者名
      Takeshi Fujiyabu, Yuki Yoshikawa, Junhyuk Kim, Naoyuki Sakumichi, Ung-il Chung, and Takamasa Sakai
    • 雑誌名

      Macromolecules

      巻: 52 ページ: 9613-9619

    • DOI

      https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.macromol.9b01654

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Negative energy elasticity in a rubber-like gel2019

    • 著者名/発表者名
      Yuki Yoshikawa, Naoyuki Sakumichi, Ung-il Chung, and Takamasa Sakai
    • 雑誌名

      arXiv:1912.13191

      巻: 1912 ページ: 13191

    • オープンアクセス
  • [学会発表] 高分子ゲルの浸透圧における普遍的状態方程式2020

    • 著者名/発表者名
      作道直幸、安田傑、酒井崇匡
    • 学会等名
      日本物理学会 第75回年次大会:領域12
  • [学会発表] ゴム・ゲルの物理に関する最近の話題2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸
    • 学会等名
      量子と古典の物理と幾何
    • 招待講演
  • [学会発表] 高分子ゲル弾性の普遍的熱力学関数2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸
    • 学会等名
      CREST-さきがけ連携公開型ワークショップ 「高分子弾性のトポロジーと革新的理論の構築に向けて」
    • 招待講演
  • [学会発表] 高分子ゲルにおける負のエネルギー弾性2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸、吉川祐紀、酒井崇匡
    • 学会等名
      2019年度高分子基礎物性研究会・高分子計算機科学研究会合同討論会
  • [学会発表] 高分子ゲル弾性の普遍的熱力学関数2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸、吉川祐紀、酒井崇匡
    • 学会等名
      第9回ソフトマター研究会
  • [学会発表] ゴムの亀裂進展速度ジャンプの機構:動的ガラス化による説明2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸
    • 学会等名
      第67回レオロジー討論会
  • [学会発表] ゴムの亀裂進展において速度ジャンプが生じるメカニズム2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸
    • 学会等名
      第68回高分子討論会
  • [学会発表] 二次元正方格子構造における応力集中と破壊の開始条件2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸
    • 学会等名
      日本物理学会2019年秋季大会:領域11
  • [学会発表] 高分子ゲルにおける負のエネルギー弾性2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸
    • 学会等名
      第二回高分子化学構造・物性相関研究会
  • [学会発表] 樹木近似によるAB型重縮合の理論解析:ゲル化条件と構造パラメータ2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸、酒井崇匡
    • 学会等名
      第68回高分子学会年次大会
  • [学会発表] AB型重縮合におけるゲル化条件と構造パラメータ2019

    • 著者名/発表者名
      作道直幸、酒井崇匡
    • 学会等名
      日本ゴム協会2019年年次大会
  • [図書] 高分子材料のトライボロジー制御2020

    • 著者名/発表者名
      作道直幸 et al.(全58名)
    • 総ページ数
      550
    • 出版者
      株式会社技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-770-0

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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