研究課題
本研究では、マイクロ流体デバイスを用いた実験的手法を中心として、界面活性剤により界面が安定化された油中水滴系のダイナミクスと多体構造の理解を目指している。本年度は、年度開始直前の研究代表者の所属機関異動に伴い、新しい機関での研究環境の立ち上げに尽力した。現在までに、マイクロ流路チップの複製や流動実験を行う環境が整い、研究計画で意図した実験系の実現と観察に成功している。特に、マイクロ流体デバイスの長さスケールや界面活性剤濃度、溶液の種類を検討することで、界面張力の低い二相流体系を用いた変形液滴の作製にも成功した。今年度の研究活動や予備実験により、新たな環境で研究計画を問題なく進展させられる基盤が整ったため、次年度以降に流動実験の圧力や流量などの実験パラメータを制御して更に詳細なデータを取得していく予定である。また、国内外の学会や研究会にも参加し、関連する国内研究者と液滴のダイナミクスに関する議論を深めている。さらに、本研究課題に関連して、密度の異なる流体が振動的に細孔を通過する非線形現象について実験と数値シミュレーションを用いた研究を行い、論文2報を投稿した。内2報は本年度内に出版済み、1報は採択されている。また、水相と油相にそれぞれ溶けた界面活性剤が油水界面で会合し界面不安定性を引き起こす実験系についても、その界面ダイナミクスと液滴の分裂について解析と考察を行い、論文1報を投稿した。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、年度開始直前の研究代表者の所属機関異動に伴い、新しい機関での研究環境の立ち上げに尽力した。この都合でマイクロ流体デバイス作製環境の整備や新規の顕微鏡システムの構築などに多少の時間を要したものの、当初の研究計画のマイクロ流体デバイスの作製や実験の実施に成功している。
現在までに、研究計画の実験システムの構築および、意図していた現象の実現に成功している。研究期間2年目となる次年度は、マイクロ流体デバイスの駆動圧力や流量などの実験パラメータを振って各種条件のデータを取得し、そのダイナミクスの解析を行う予定である。一方で、次年度は新型コロナウイルス対応に追われ、また遠隔による業務と不要不急な実験研究の停止を求められており、今後の状況は不透明である。自粛が解除され次第上記の実験を遂行していくとともに、自粛期間中もこれまでに得られている実験データの整理や解析を行うことで本研究を引き続き実施していく。
本研究プロジェクトの実施直前に研究代表者が機関異動を行ったため、今年度は研究環境の整備に多くの時間を費やすこととなった。また、異動に伴い本研究計画で購入予定であった基盤的な実験装置を利用できる環境となり、初年度の使途を当初の計画から変更した。また、解析等に用いる予定である装置は年度末の新型コロナウイルスの騒動により年度内の納品が不可能になり、購入を次年度に見送った。次年度はこの購入を行うとともに、自粛が解け所属機関での実験が可能となり次第、試薬や基板等の高額な実験消耗品を用いた実験を随時実施する。
すべて 2020 2019 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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