研究課題/領域番号 |
19K14677
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉村 優一 大阪大学, 蛋白質研究所, 招へい研究員 (70632248)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 天然変性蛋白質 / 相転移 |
研究実績の概要 |
近年、蛋白質の相転移や(液‐液)相分離が細胞内での様々な生理機能の発現において重要な役割を担うことが明らかになってきた。本研究では、蛋白質の相転移を駆動する天然変性領域(特定の立体構造をとらずに動的に揺動する領域)の動的な構造変化に着目し、それを明らかにするための核磁気共鳴(NMR)測定手法を改良した。特定の立体構造をもつ蛋白質と比べて、天然変性蛋白質は化学シフト値の分散が狭いため、通常のアミド水素検出による解析(1H‐15N相関スペクトル等)は困難である。本研究では、極低温プローブを装着した高感度測定が可能な溶液NMR装置を用いて、カルボニル13C核を直接検出するためのパルス系列の修正をおこなった。 また、蛋白質の相転移を表す相図の作成に着手した。ストレス顆粒の主要構成成分である蛋白質TIA‐1は、3つのRNA認識モチーフ(RRM1、RRM2、RRM3)およびプリオン様ドメイン(PLD)をもつ。PLDは、特定の立体構造をもたない天然変性領域である。本研究では、TIA‐1のRRM3‐PLD(アミノ酸残基199‐386)を発現・精製し、蛋白質濃度および塩濃度に依存した相転移を観察した。蛋白質濃度および塩濃度の増加に伴い、蛋白質が溶液状態からハイドロゲル状態へと相転移することを確認した。固体NMR測定により、ハイドロゲル化した試料の運動性の高い領域および低い領域に由来するNMR信号を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
蛋白質の発現および精製方法の確立を目指したが、生理的条件下において蛋白質が凝集しやすいため、十分な収量が得られていない。その一方で、モデル蛋白質を利用することで、NMR測定法を改良することには成功している。
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今後の研究の推進方策 |
目的蛋白質の発現および精製方法の再検討が必要である。蛋白質が相転移する条件を体系的に検証して相図を作成することで、蛋白質の収量を増加させるためのヒントを得ることができると考えている。また、相図に基づくアプローチとNMR解析のマクロ・ミクロ両視点による包括的な解析から、凝集体へと構造転移する反応の分子機序を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)実験条件の検討等に時間を要し、一部の実験に遅れが生じているため。 (計画)NMR測定に必要な同位体標識蛋白質の発現に必要な試薬および蛋白質精製用のカラム、試薬等を必要とする。
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