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2019 年度 実施状況報告書

分子性液体のポリアモルフィズムと分子運動の関係

研究課題

研究課題/領域番号 19K14679
研究機関国立研究開発法人物質・材料研究機構

研究代表者

佐々木 海渡  国立研究開発法人物質・材料研究機構, 先端材料解析研究拠点, JSPS特別研究員 (60806173)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワードポリアモルフィック転移 / 誘電緩和 / 水素結合 / マンニトール
研究実績の概要

ポリアモルフィック転移を示すと考えられているマンニトールを用いて、2つのアモルファス状態(super cooled liquidとPhase X)にある試料の誘電分光測定をそれぞれ行った。その結果を用いて、水素結合のダイナミクスを反映していると考えられているJohari-Goldstain(JG) β緩和とポリアモルフィック転移の関係を調べた。ポリアモルフィック転移の前後でJGβ緩和の緩和時間が1.5桁程度変化すること、Phase X相のJGβ緩和の緩和強度がsuper cooled liquid相のそれより2倍程度大きいことが明らかになった。マンニトールのポリアモルフィック転移に関する既存の研究ではポリアモルフィック転移の前後で水素結合の強さが変化することが報告されており、JGβ緩和のダイナミクスの変化は水素結合の強さの変化に大きく影響を受けていることが示唆された。
また、その場観察が可能な誘電分光測定装置を実現するため、新しく開発した2種類のプローブの性能を試験した。一つはITO透明電極を用いたプローブ、もう一つは櫛形電極を用いたプローブである。ITO透明電極は導電体である酸化インジウムスズの抵抗値が無視できないことや、ハンドリングが難しいことから、実用には耐えないと判断した。一方で櫛形電極の使用には目立った困難がなく、得られるデータも一般的に使用される並行平板電極によって測定されたデータと遜色ないことがわかった。よって、今後の測定には櫛形電極を積極的に用いることとした。開発した櫛形電極を用いて測定した高分子水溶液のデータを学術論文として発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画においては、初年度の研究計画として、実験装置の開発、マンニトールの分子ダイナミクスの観測、亜リン酸トリフェニルの分子ダイナミクスの観測を予定していた。この内、実験装置の開発とマンニトールの分子ダイナミクスの観測は当初の計画以上に進展した。
実験装置の開発については、その場観察可能な誘電緩和測定装置の最も重要な要素である電極として櫛形電極を開発し、また、それを用いたガラス形成物質の測定データを学術論文として発表した。マンニトールの分子ダイナミクスの観測については2年目の夏頃の完了を予定していたがすでに完了し、現在は学術論文の投稿準備中である。
一方で、亜リン酸トリフェニルの分子ダイナミクスの観測については予備的なデータを取得した。そのため、全体としてはおおむね順調に進展していると判断した。

今後の研究の推進方策

次年度は予定を変更することなく、マンニトールの分子ダイナミクスについての学術論文の投稿、マンニトール/ソルビトール混合系の分子ダイナミクスの観測を実施する。マンニトール/ソルビトール混合系においてはガラス転移温度より十分高温まで過冷却状態を維持したまま加熱できることがわかっているため、初年度で観測したJohari-Goldstain(JG) β緩和に加えてガラス転移の原因である構造緩和の観測と特徴づけを試みる。

次年度使用額が生じた理由

令和1年度は測定装置の開発途中であったことから、開発した2種類の測定装置を並列で運用することがなく、購入予定であった測定装置制御用PCは必要とならず、購入しなかった。それにより次年度使用額が生じた。令和2年度は開発した2種類の測定システムを並列して運用するので、次年度使用額は測定装置制御用PCの購入に当てる予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Dynamics of Uncrystallized Water, Ice, and Hydrated Polymer in Partially Crystallized Poly(vinylpyrrolidone)-Water Mixtures2020

    • 著者名/発表者名
      Fujii Mitsuki、Sasaki Kaito、Matsui Yurika、Inoue Shiori、Kita Rio、Shinyashiki Naoki、Yagihara Shin
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry B

      巻: 124 ページ: 1521~1530

    • DOI

      10.1021/acs.jpcb.9b11552

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Heterogeneous Solvent Dielectric Relaxation in Polymer Solutions of Water and Alcohols2020

    • 著者名/発表者名
      Kaito Sasaki, Kenta Bandai, Masanobu Takatsuka, Mitsuki Fujii, Minato Takagi, Rio Kita, Shin Yagihara, Hiroshi Kimura, Naoki Shinyashiki
    • 雑誌名

      Frontiers in Physics

      巻: 8 ページ: -

    • DOI

      10.3389/fphy.2020.00084

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Water in the hydrated protein powders: Dynamic and structure2019

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Kaito、Popov Ivan、Feldman Yuri
    • 雑誌名

      The Journal of Chemical Physics

      巻: 150 ページ: 204504~204504

    • DOI

      10.1063/1.5096881

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] モルタルのフレッシュ特性におよぼす化学混和剤への熱刺激効果2019

    • 著者名/発表者名
      瀧川瑞季, 佐々木海渡, 喜多理王, 伊達重之
    • 雑誌名

      コンクリート工学年次論文集

      巻: 41-1 ページ: 1139~1144

    • 査読あり
  • [学会発表] 高圧下での高密度アモルファス氷の誘電緩和時間に対する同位体効果2019

    • 著者名/発表者名
      佐々木海渡, 鈴木芳治
    • 学会等名
      H2Oを科学する2019
  • [学会発表] 高濃度グリセロール水溶液の圧力誘起動的転移2019

    • 著者名/発表者名
      佐々木海渡, 鈴木芳治
    • 学会等名
      H2Oを科学する2019

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公開日: 2021-01-27  

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