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2020 年度 実施状況報告書

分子性液体のポリアモルフィズムと分子運動の関係

研究課題

研究課題/領域番号 19K14679
研究機関東海大学

研究代表者

佐々木 海渡  東海大学, 理学部, 助教 (60806173)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2023-03-31
キーワード分子性液体 / ポリアモルフィック転移 / 混合系 / 誘電緩和 / マンニトール
研究実績の概要

本年度はマンニトール/ソルビトールの混合系の実験を進めた。既報からマンニトール/ソルビトールの混合系でもポリアモルフィック転移(もしくは液体-液体相転移)が起こることが示唆されている。ここでは純粋なマンニトールと同様に2つのアモルファス状態をsuper cooled liquidとPhase Xと呼ぶこととする。マンニトール/ソルビトールの混合系においては純粋なマンニトールよりも1次相転移温度が高い温度に位置するため、ガラス状態だけでなく液体状態の分子ダイナミクスも調べることができる。それぞれの状態にある試料の誘電分光測定を実施し、super cooled liquidとPhase Xのガラス状態もしくは液体状態での分子ダイナミクスを調べることができた。結果から以下の2つのことが明らかになった。
(1)糖アルコールでは水素結合のダイナミクスを反映していると考えられているJohari-Goldstain(JG) β緩和の特徴が純粋なマンニトールとほぼ同じであることが分かった。
(2)ガラス転移の起源である構造緩和のfragility indexについて、super cooled liquid相がPhase X相よりも大きな値を示すことが示唆された。シリカガラスなどのネットワーク性のガラス形成物質ではfragility indexが小さな値となることが知られており、super cooled liquid相と比較してPhase X相の小さなfragility indexの値は、Phase X相がより発達した水素結合ネットワークを持つことと対応していると考えられる。
一方、2つの状態の間の転移が液体-液体相転移であるのか、液体とガラス状態の間の転移であるのかは誘電緩和測定からは判別できなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

マンニトール/ソルビトール混合系において、ガラス転移の原因となる構造緩和を幅広い温度範囲、周波数範囲で観測することができたため、実験については順調に進展していると考えている。一方で、純粋なマンニトールの実験結果をまとめた学術論文はまだ発表できていないため全体として「やや遅れている」とした。

今後の研究の推進方策

次年度は引き続きマンニトール/ソルビトール混合系とブタノールの分子ダイナミクスの観測を実施する。マンニトールの分子ダイナミクスについての学術論文の投稿、マンニトール/ソルビトール混合系の分子ダイナミクスの学術論文の投稿を進める。

次年度使用額が生じた理由

2020年度夏に開催予定であった国際会議(BDS2020、スペイン)が2021年度に延期になったためその旅費を次年度使用額とした。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Relating the dynamics of hydrated poly(vinyl pyrrolidone) to the dynamics of highly asymmetric mixtures and polymer blends2021

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Kaito、Takatsuka Masanobu、Shinyashiki Naoki、Ngai Kia L.
    • 雑誌名

      Journal of Molecular Liquids

      巻: 333 ページ: 115907~115907

    • DOI

      10.1016/j.molliq.2021.115907

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] 新しい高圧力下誘電分光測定用電極の開発2021

    • 著者名/発表者名
      佐々木海渡、鈴木芳治
    • 雑誌名

      東海大学紀要理学部

      巻: 56 ページ: 20~27

    • DOI

      10.18995/24352640.56.20

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 広帯域誘電分光法による氷結したウシ血清アルブミン水溶液の氷の分子運動2021

    • 著者名/発表者名
      塚原達也、佐々木海渡、喜多理王、新屋敷直木
    • 雑誌名

      東海大学紀要理学部

      巻: 56 ページ: 28~42

    • DOI

      10.18995/24352640.56.28

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 光散乱法による高分子電解質のキャラクタリゼーション~未来を担うバイオマス資源キトサン~2021

    • 著者名/発表者名
      南原直紀, 高橋学, 津川幸太, 佐々木海渡, 喜多理王, 新屋敷直木
    • 学会等名
      東海大学マイクロ・ナノ啓発会第13回学術講演会
  • [学会発表] Optical Beam Deflection法によるミオイノシトール のルードヴィッヒ・ソレー効果の研究2021

    • 著者名/発表者名
      福岡優斗, 佐々木海渡, 喜多理王, 新屋敷直木
    • 学会等名
      東海大学マイクロ・ナノ啓発会第13回学術講演会
  • [学会発表] 低濃度グリセロール水溶液のガラス転移ダイナミックスの誘電的研究2020

    • 著者名/発表者名
      佐々木海渡
    • 学会等名
      H2Oを科学する 2020
  • [学会発表] 高圧下誘電緩和測定によるグリセロール水溶液のガラス転移ダイナミックスの研究2020

    • 著者名/発表者名
      佐々木海渡、鈴木 芳治
    • 学会等名
      第61回高圧討論会

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公開日: 2021-12-27  

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