宇宙プラズマや核融合プラズマの診断のため、鉄イオンやシリコンイオンの原子データ(各準位のエネルギー値やその間の遷移レート係数)のセットを用いた分光診断が必要であった。これまでは、個別に報告される実験データ・理論データの収集、丁寧な品質評価、未知のデータの補完など、膨大な労力をかけることで各分野における高品質な原子データセットが構築されてきた。しかし近年の科学技術の発展に伴い、別の原子に関するデータセットが必要になりつつある。新たな元素・価数のイオンに関する診断が必要になる度、多大な時間・労力が費やされている状況である。 本研究では原子データの評価・生成を自動化するための方法論を確立した。具体的にはA) 多電子原子のエネルギー準位について、機械学習技術を用いた補完・品質評価を行った。特に、同電子系列と呼ばれる、電子数が同じで核電荷が異なる原子イオンのエネルギー準位が核電荷に対してスムーズな関数になることを利用し、その系列がどの程度連続的に繋がっているかを調べた。B) 未同定の発光線から、新たなエネルギー準位を発見する方法論の開発を行った。特に、千以上の発光線を用い、統計的な手法で効率よく準位同定を行うことを目指した。C) 大量エネルギー準位・遷移が存在し、それらの正確な数値計算が難しい多電子原子について、少量の原子データのみからその挙動を推定するモデルを構築した。
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