研究課題/領域番号 |
19K14686
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
林 祐貴 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00823387)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非接触プラズマ / 再結合フロント / 熱パルス / 直線型装置 |
研究実績の概要 |
2020年度は主に、1「リサイクリング粒子が熱パルス緩和に与える影響に関する解析」、2「直線型装置TPD-IIにおけるプラズマ源開発」を行った。 1については、2019年度にオランダDIFFER研究所の直線型プラズマ装置Magnum-PSIにおいて行った実験データの解析に関するものである。ダイバータ板に熱パルスが流入した際の間欠的リサイクリングフラックスの増加によって、後続の熱パルスが緩和されることを示唆する結果が得られた。この現象は将来の核融合炉においてELMのような突発的な熱負荷がダイバータ板に飛来した際の熱負荷減少が期待されることを意味し、リサイクリング粒子の重要性を示している。熱パルスが減衰する現象は中性ガス圧が高い条件では観測されなかった。理由はリサイクリング粒子が熱パルスの運動量を奪う過程に対して、リサイクリング粒子が背景の中性粒子によって散乱される過程が支配的となったためであると考えている。これらの物理過程は中性粒子の運動を考慮したモデリングによって再現することを検討している。 2については、高密度プラズマ生成装置として核融合科学研究所の有するTPD-IIを改良するものである。COVID-19の影響により、海外の実験装置を用いた研究が難しくなっている中で、国内に同規模のプラズマ生成装置を非接触プラズマ研究のプラットフォームとして整備することの意義は大きい。本研究では核融合炉のダイバータ領域に生成される非接触プラズマの再結合フロントに関する研究を遂行するため、非接触プラズマ生成に必要な高密度(>5×10^19m^-3)のプラズマ生成を目標として、直流アーク放電プラズマ源を設計・開発した。2021年度は開発したプラズマ源を用いた放電試験とパラメータ計測を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非接触プラズマにおける熱パルス実験での取得データの解析が順調に進んでいる。また、他機関の実験装置を用いた研究が困難な状況の中で、TPD-IIにおける新たなプラズマ源開発も完了し、基盤を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
間欠的なリサイクリングフラックスの増加に伴う熱パルスの運動量減衰過程について、中性粒子の輸送を考慮したモデリングを行う。リサイクリング粒子が背景中性粒子に散乱されることで、熱パルスの緩和が観測されない条件を推定する。熱パルスがリサイクリング粒子との衝突により運動量を失うことで、磁力線方向の速度が減衰し、体積再結合過程が促進されていることをモデリングとの比較で検証する。 開発したプラズマ源を用いて、TPD-IIにおける放電試験を実施する。生成されたプラズマは高速掃引プローブを用いたパラメータ計測を行う。中間電極のバイアスを外部から積極的に制御することで、放電電力に対するプラズマの引き出しが最大となる条件を探索し、放電の最適化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は海外出張旅費を計上していたが、COVID-19の影響のため出張を取りやめた。旅費として計画していた予算は自身の研究機関で実施する実験のために使用したが、一部は2021年度の旅費と実験のための物品費として計画している。以上のため、2021年度分の使用額が生じた。
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