研究課題/領域番号 |
19K14687
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
辻村 亨 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00732744)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電子サイクロトロン波 / 光渦 / ヘリカル波面 / 磁化プラズマ / ラゲール・ガウシアンビーム / 軌道角運動量 |
研究実績の概要 |
本研究は電子サイクロトロン加熱において、光の軌道角運動量が異方性媒質である磁化プラズマ中の伝搬にどのように影響するかを解明することを目的としている。 本年度は冷たく一様な磁化プラズマ中において、ヘリカル波面を持つ電子サイクロトロン(EC)波の伝搬特性に関する基礎理論の構築に成功した。この理論ではヘリカル波面が波動場に与える効果を記述した。この効果はヘリカル波面を持つEC波の渦度(トポロジカルチャージ:ヘリカル波面のねじれ度合いを表すパラメータ)が大きく、光軸からの距離が短くなるほど顕著になった。 この特異な伝搬特性は真空中において近軸近似解で表される光渦であるラゲール・ガウシアン(LG)ビームを用いた波動伝搬シミュレーション(商用ソフトCOMSOLを利用)においても確認できた。光渦でない通常のEC波のプラズマ中での固有モードは、磁場に垂直な伝搬の場合、正常波(Oモード)と異常波(Xモード)に分類される。ヘリカル波面を持つEC波の場合、低密度側で励起された渦度mのOモードLGビームの一部分が、高域混成共鳴層で渦度m-1の高波数XモードLGビームに変換されることが分かった。 本研究結果は旋回する電子から軌道角運動量を持つ光がサイクロトロン放射された後に、磁化プラズマ中をどのように伝搬するかを説明する。また逆に電子サイクロトロン加熱のためにプラズマ外から入射したミリ波帯光渦の伝搬が、従来用いられてきたガウシアンビーム(あるいは平面波)の伝搬とどのように異なるのかを説明する。今後のプラズマ加熱や放射計測に光渦を応用する上で重要な知見が得られたといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初はヘリカル波面が伝搬に与える影響について数値シミュレーションにより明らかにしていく予定であったが、ヘリカル波面を持つEC波の伝搬特性について、基礎的ではあるが、理論的に明らかにすることに成功したため、本研究課題を順調に進展させることができた。計算コストの削減につながっただけでなく、伝搬特性についての物理的描像をより詳しく理解することができた。
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今後の研究の推進方策 |
ヘリカル波面を持つEC波の伝搬の基礎理論について、近似による適用範囲の制約から、光軸である位相特異点の近傍を扱うことができていない。今後は理論をさらに発展させ、実験適用を目指したより現実的なビームサイズにおける光渦の取り扱いができるようにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大により、当初計画していた国際会議の参加が不可能になり、主に旅費が未使用になったため、次年度使用額が生じた。次年度においては、延期になった国際会議に参加し、研究成果を発表したり、構築した理論を実験的に検証するための物品費に使用したり、伝搬計算を実行する数値計算用サーバのメモリ増設に使用したりする計画である。
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