研究課題
本研究は電子サイクロトロン加熱において、光の軌道角運動量が異方性媒質である磁化プラズマ中の伝搬にどのように影響するかを解明することを目的としている。本年度は、軌道角運動量を持つ電子サイクロトロン波を生成するために、ミリ波帯光渦伝送系を構築してきた。ジャイロトロンからのミリ波を光渦に変換するためのスパイラル位相ミラーを開発し、反射特性を調べた。具体的には、ミリ波帯で所望の軌道角運動量を持つ光渦を発生させるための軸外しスパイラル位相ミラーのミラー面をモデル化し、機械加工により製作した。低パワー試験により、反射波の軌道角運動量を設計値と比較し、良好な結果を得た。軌道角運動量に対応したドーナツ状の強度分布を得た。位相に関しては、干渉法や位相回復法を用いて、反射波の軌道角運動量を評価し、所望の位相特性を得たことを確認した。このようなミラーは、大電力での冷却が可能であるため、ジャイロトロンなどの発振器とアンテナミラーの間にある既存のミリ波伝送系に設置することができ、ヘリカル波面を持つ高周波の磁化プラズマ中での伝搬実験が可能になる。高パワー耐性のあるスパイラル位相ミラーを77 GHz伝送系や70 GHz伝送系に設置できるように、マイターベンド用フランジに収めた。既存の電子サイクロトロン加熱伝送系に、切替器を用いてバイパス導波管を設け、ミリ波帯光渦伝送系を構成した。光渦を用いた新しい電子サイクロトロン加熱の実験的検証へと今後展開していく。
2: おおむね順調に進展している
軌道角運動量を持つ電子サイクロトロン波を生成するためのスパイラル位相ミラーの開発に成功したため、おおむね順調に進展しているといえる。また既存の電子サイクロトロン加熱用のミリ波伝送系にバイパス導波管を挿入することで、ミリ波帯光渦伝送と通常のミリ波伝送を切り替えて運用できるようにしたため、軌道角運動量の効果を比較実験することが可能である。昨年度構築した軌道角運動量を持つ電子サイクロトロン波の磁化プラズマ中の伝搬に関する基礎理論を実験と比較できる状況にした。
軌道角運動量の有無の違いによる電子サイクロトロン波の伝搬の違いを実験的に調べ、伝搬基礎理論を検証する。実験では波長に比べて大きいビームサイズのミリ波を使用するため、伝搬基礎理論の方も現実的なビームサイズにおける光渦の取り扱いが可能になるように改善する。本年度に開発したミリ波帯光渦伝送系は、世界中の電子サイクロトロン加熱装置に適用可能なので、今後様々なプラズマ実験装置で比較検証を行っていく。
昨年度に引き続き、新型コロナウイルス感染症の流行により、当初計画していた国際会議の参加が不可能になり、主に旅費が未使用になったため、次年度使用額が生じた。次年度においては、延期になった国際会議に参加し、研究成果を発表したり、構築した理論を実験的に検証するための物品費などに使用したり、伝搬計算を実行する数値計算用サーバの管理に使用したりする予定である。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 6件、 招待講演 2件)
Review of Scientific Instruments
巻: 93 ページ: 043507~043507
10.1063/5.0077893
Physics of Plasmas
巻: 29 ページ: 032504~032504
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