研究課題/領域番号 |
19K14691
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
小野寺 優太 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (70823847)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高温超伝導導体 / 高温超伝導線材 / 磁化測定 / 欠陥検出手法 |
研究実績の概要 |
核融合炉用超伝導マグネットには大電流容量の導体が必要であり、高温超伝導(HTS)線材を束ねたHTS導体の研究開発を進めている。導体を構成するHTS線材の通電特性は、温度・磁場強度・磁場印加角度によって複雑に変化するため、正確に把握する必要がある。また、HTS線材自体の品質保証技術は研究され、線材の生産技術として確立してきているのに対し、線材を積層・集合化した導体の品質を検査する方法については、導体そのものが研究開発段階であることから、技術的に確立していない。そこで、本研究では、HTS線材の通電特性をデータベース化するとともに最適な大電流HTS導体を設計・試作する。そして、導体の通電特性を評価するとともに、磁化測定を用いた新たな導体評価技術を開発し、欠陥検出および電流偏流の挙動を明らかにすることで、製作技術にフィードバックをかけ、大電流HTS導体の製作・評価技術の確立を目的とする。 2022年度は、HTS線材の臨界電流値の磁場印加角度依存性を計測する装置を製作し、得られたデータをもとに自己磁場中での大電流HTS導体の通電特性を解析するとともに、製作したHTS導体に対して通電試験を実施し、評価を行った。さらに、磁気センサを走査させる装置を製作し、HTS線材を積層させた試料の転流の挙動について実測した。 また、2021年度に引き続き、欠陥位置判別手法を導体に適用するために、超伝導マグネットおよび真空容器の設計・製作を行った。組み上げの過程において部品の追加工が必要となったため、再度部品の設計・製作を行った。さらに、回転・ベクトル測定機構付磁化測定用サンプルホルダーについても、ピックアップコイルの製作において銅線の切断や巻線の困難性といった課題が生じていたが、専用の治具を製作することでこれらを解決し、必要な部品の調達を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、回転・ベクトル測定機構付磁化測定プローブを用いた評価システムを構築し、HTS線材の通電特性を評価する予定であった。信号取得部分に用いる鞍型ピックアップコイルの製作における技術的な課題を解決したものの、低温磁場中でステージを駆動させるためのギアの設計・製作に時間を要した。そのため、研究計画を修正し、HTSコイルを用いた装置を製作し、HTS線材の臨界電流値の磁場印加角度依存性を計測するとともに、得られたデータをもとに大電流HTS導体の設計・試作および評価を行った。 また、欠陥位置判別手法を導体に適用するために、超伝導マグネットおよび真空容器の設計・製作を行っているが、組み上げの過程において部品の追加工が必要となったため、再度部品の設計・製作するための時間が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、回転・ベクトル測定機構付磁化測定プローブの低温磁場中で駆動可能なギアの設計・製作および必要な部品の購入に予算を使用した。また、大電流HTS導体の設計・試作およびデータ取得した結果の成果報告および情報収集のために予算を使用した。 次年度は、回転・ベクトル測定機構付磁化測定プローブを用いた評価システムの構築を完成させるために予算を使用する予定である。そして、 HTS線材の通電特性を評価しデータベース化するとともに、試作した導体の磁場中の通電特性に対して定量的な解析を行う。また、磁化測定を用いた導体の欠陥検出手法についても、磁場印加用に超伝導マグネットを使用し強磁場化した装置を完成させ、本欠陥検出手法がHTS導体においても適用可能であることを実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプルプローブの設計・製作において、必要な部品の調達を行ったものの、低温磁場中で駆動可能なギアの設計・製作に時間を要したため、今年度中に装置全体の完成に至らなかった。そのため、次年度は装置のサンプルステージを完成させるために予算を使用し、装置全体を完成させるとともに、装置を使用して得られた成果の報告に予算を使用する予定である。
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