研究課題/領域番号 |
19K14698
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
佐々木 渉太 東北大学, 工学研究科, 助教 (90823526)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大気圧プラズマ / 活性酸素種 / 活性窒素種 / 活性塩素種 / 活性硫黄種 / カルシウムイオン |
研究実績の概要 |
本研究では,数十億年間の大気組成で大部分を占めた窒素・酸素・二酸化炭素・硫黄化合物・水の混合気体中放電によって生成した大気分解活性種を細胞が感受する機構を明らかにすることを目的としている. 1. 大気分解活性種のリアルタイム計測手法の確立 ヘリウム・空気を原料ガスに用いて,大気圧プラズマを生成した.プラズマ生成気相活性種の組成は,フーリエ変換赤外分光光度計によって定量した.同時に,新たに構築した還流系活性種トラッピングシステムを用いて,分流した液体の吸収スペクトルから液中活性種濃度の継時変化を取得することに成功した.また,化学プローブを使用することで,吸収分光法だけでは観測が困難な液相活性種(水酸基ラジカル・過酸化亜硝酸・次亜塩素酸)の測定にも成功した.これらの結果から,気相活性種から液相長寿命活性種の生成に至る輸送機構を議論することが可能となった.さらに,活性酸素・窒素種の標準試薬を用いた検討によって,プラズマ照射溶液中で生じる化学反応式・反応速度定数リストを作成し,実験で得られたプラズマ照射溶液中の活性種濃度変化を再現する反応シミュレーションを構築した.これにより,細胞に供給される活性種を(実験的に観測が困難な活性種も含めて)予測することが可能となった. 2. 受容体シグナルのリアルタイム計測手法の確立 プラズマ処理した生理食塩水を分流し培養細胞に供給しながら,細胞内カルシウムイオン濃度のライブイメージングを行うことが可能な系を構築した.1で得られた活性種供給量と細胞内カルシウムイオン濃度の推移を基に,阻害剤を用いた検討から,カルシウム応答を誘導する活性種の有力候補として過酸化亜硝酸が浮上した.また,プラズマを直接照射しながら細胞内カルシウムイオン濃度のライブイメージングが可能な顕微鏡を構築し,水酸基ラジカルも同様にカルシウム応答を誘導することを示唆する結果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度に計画していた大気分解活性種・受容体シグナルのリアルタイム計測手法の確立に加え,次年度で行う予定であった特定受容体シグナル活性を促す大気・液相活性種組成の同定に関連する結果を得るに至った.また,当初予定してはいなかったプラズマを直接照射しながら細胞内カルシウムイオン濃度のライブイメージングが可能なシステム構築にも成功した. 以上の理由により,当初の計画以上であると言える.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の成果を踏まえて,最終年度は以下の研究を推進する. 1.大気分解活性種の計測・制御 大気分解気相活性種組成の計測を引き続き進める.また,ガス組成やプラズマ生成電圧を制御して,気相活性種組成を取得し,主要な気相化学反応の抽出を試みる.特に,二酸化炭素や硫黄化合物を添加した際の化学反応についても明らかにしていく.気相活性種を液相に溶解させた後に生じる化学反応について,実験・計算シミュレーションを併用して明らかにする. 2. 活性化受容体の同定・受容体変異細胞株を用いた感受部位の同定 これまで明らかにしてきたプラズマ感受受容体の一つであるTRPチャネルファミリーに着目して,機能チャネルの同定及び機能部位を明らかにしていく.具体的には,特定TRPチャネルの強制発現株もしくはsiRNAノックダウンを用いて,プラズマ処理生理食塩水添加後のカルシウムイオン動態を観測する.こうして得られた細胞への活性種供給量・組成とカルシウム応答をデータベース化していき,その相関関係に基づいて,詳細な感受機構解明を試みる.
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