研究課題
若手研究
本研究は,生物が長年受けてきた環境ストレスの一つである大気分解活性種を高感度に受容する仕組みを明らかにするために,細胞が高感度に応答する活性種供給環境とそれに関与する受容体を見つけ出すことを目的として,研究を行った.大気放電が,酸素及び窒素の解離を起点にして,液中ラジカル反応を開始させ形成した,数分にわたって持続するO2-/ONOO-供給が,細胞膜上の受容体チャネルであるTRPA1/TRPV1のシステイン残基修飾を介した活性化を誘導することを明らかにした.
プラズマ医療
これまで,大気放電を活用した医療応用は,大多数が現象の報告に留まっていたが,本研究は,細胞が感知する大気分解活性種の同定,さらには機能受容体の同定と修飾機能部位の同定という分子機構解明に至ったため,学術的意義は大きいといえる.さらに,温度・機械刺激・痛み・酸-塩基といった種々の物理化学的刺激の感知に関わるTRPチャネルは,有望な創薬標的ともされており,特定のTRPチャネル活性を大気分解活性種で制御できる可能性を示したことは,新しい医療・薬応用創生につながりうる,社会的意義の大きい成果である.