研究課題/領域番号 |
19K14699
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
簾 智仁 信州大学, 先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所, 助教(特定雇用) (40783923)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 液中プラズマ / アルコキシド / 低温結晶化 / 無機結晶 |
研究実績の概要 |
結晶性無機材料の低温結晶化を実現する新しい反応経路を提案する。フレキシブルデバイスや高比表面積をもつ多孔体の作製を念頭に,結晶性金属酸化物を200℃以下の低温で作製する。本課題では,申請者が取り組んできた液中プラズマプロセスに対して,金属アルコキシドを原料として用いることで,ラジカル反応により結晶化を促進し,結晶化温度の大幅な低下を目指す。本年度は,モデル物質として,層状複水酸化物の合成を通して原料およびプラズマ生成の最適条件を調査した。特に,低温結晶化のメリットを結晶の粒子サイズの大幅な低下へと当てはめ,数十nmサイズの層状複水酸化物結晶粒子の作製を目指した。ここで,層状複水酸化物の組成はニッケルと鉄を選択した。初めに,金属アルコキシドには,プロポキシド,グリセン,アセチルアセトンを,溶媒には,水,エタノール,イソプロピルアルコール,グリコールを検討した。結果として,ニッケルの原料として10mM程度の硝酸ニッケル,アルコキシドにはグリセン,溶媒には水,鉄の原料には,塩ではなく鉄電極を用いることでニッケル鉄からなる層状複水酸化物を得られることが分かった。同時に,液中プラズマの生成条件の検討結果から,パルス電源を用いた場合に,パルス幅,周波数共に単位時間あたりに印加するエネルギーを抑制することで,30分程度の合成時間で目的の組成を得ることができた。合成条件は室温である。ただし,この時,未反応生成物である水酸化ニッケルが生成したことがXRD測定から確認され,得られた粒子の粒子径についても,20nm程度のものが多く確認されたが,100nm程度の粒子も多く確認されており,このような不純物および大型粒子の低減が次年度の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に予定していた原料およびプラズマの最適な生成条件の調査を実施し,基本的な実験条件を確立できた。特に,当初は合成時におけるプラズマの不安定化を懸念していたが,上記の条件においてはこれを回避できることが分かった。モデル材料の選択においては,当初の予定から物質を変更したが,低温結晶化に対する取り組みの範疇においては特に問題がないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
20nm以下の粒子径をもつ不純物のない層状複水酸化物の低温結晶化合成と複合体の作製に向けてより詳細な反応系の設計を実施する。具体的には,現状不純物が生成している主な原因は合成系において微小なプラズマ発生部に原料が効率的に供給されていないことであると考える。このような観点から,フロー系反応容器の設計に取り組み,その後,複合体の作製に移行する。
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