研究実績の概要 |
素粒子標準模型を超えた新物理に対して、これまでの「標準的」な有効理論(Standard Model Effective Field Theory (SMEFT), Higgs Effective Field Theory (HEFT) )は、素粒子標準模型に含まれない新粒子に対する物理量を計算することができない、という弱点を抱えていた。そのため、既存の標準的な有効理論は、新粒子を直接探索することを目的とした実験に対して適用不可能な枠組みであった。そこで本研究では、その弱点を克服すべく、既存の標準有効理論に対し、新粒子の自由度を系統的に取り入れる方法について研究した。
今年度は、標準模型に含まれない新たなスカラーおよびフェルミオン(物質場)を加えて、有効理論を拡張することに成功した。我々が提案した拡張有効理論(Generalized Higgs Effective Theory; GHEFT)では、有効相互作用を内部空間上の共変量と特徴づけているため、物理量との関係が明確になっており、粒子の表現による不定性などといった非物理的な冗長性を取り除いたフォーマリズムとなっている。発表した学術論文では、その有効理論の構成処方の詳細や、物質場同士のボルン散乱振幅、さらにそれらの量子補正の取り扱いについて包括的にまとめた。この一連の研究成果が業界内で評価され、第16回(2022年)日本物理学会若手奨励賞を受賞した。
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