研究課題/領域番号 |
19K14704
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
関澤 一之 新潟大学, 研究推進機構, 特任助教 (00820854)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 原子核物理学 / 量子多体問題 / 重イオン反応 / 深部非弾性散乱 / ダイナミクス / 時間依存密度汎関数法 / 確率論的平均場理論 / 並列計算 |
研究実績の概要 |
量子多体問題の研究は,新奇な物質・デバイスを探求する物質科学から,生体物質の機構解明を目指す生命科学,そして,元素の起源に関わる天体現象を含む天体核物理学の根幹をも成す,極めて普遍的かつ重要な基礎科学的研究である.本研究課題では,時間に依存する量子多体問題,特に原子核ダイナミクスの,より現実的な記述を与える新しい理論的枠組みを構築し,最新のスーパーコンピュータを駆使した超並列計算により,原子核の励起・崩壊・反応過程における未解決問題に挑戦する.
本研究は,原子核物理学に位置付けられ,原子核―2種類のフェルミ粒子(陽子・中性子,総称して核子と呼ばれる)から成る有限量子多体系―に発現するダイナミクスの統一的な理解を与えることを目指したものである.本研究の目的は,従来の枠組みを超えた「次世代理論」を構築し,その超並列計算を実現させることにより,従来の枠組みで記述することができない稀少プロセス,多体のトンネル現象,量子揺らぎ等の記述を可能にし,内在する物理を明らかにすることである.
次世代理論では,従来の理論的枠組みの“自由度”を増やし,これまでに記述することができなかった過程の記述を実現させる.初年度には,従来の理論的枠組みにランダムな初期揺らぎを導入する方法(確率論的平均場理論)を採用し,並列計算コードを実装・応用することで,原子核の衝突過程をより現実的に記述できることを示した.この方法では,ランダムに生成された物理過程は独立に扱われており,それぞれの相関を考慮することによって,さらに記述を改善できると期待している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の理論的枠組みを拡張するにあたり,当初は“自由度”の増やし方が明確ではなく,不確定な要素であった.本研究課題の初年度の実施により,乱数を用いたある条件を満たす初期揺らぎの導入が効果的であることが示された.この点に関しては,当初の計画以上に進展していると考えている.一方で,拡張理論の実装に時間を割いたこともあり,当初予定していた複数のGPUで動作する超並列計算コードの実装がまだ完了していない.これらの状況を総合し,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究の進捗状況を鑑み,次年度には,1)複数のGPU上で動作する超並列計算コードの実装を完了させたい.また,当初の研究実施計画にもある,2)現在独立に扱われている自由度間の相関を取り入れる枠組みの実装に取り組む.これらの実装が順調に進んだ場合には,初年度で採用した確率論的平均場理論への応用を視野に入れ,研究を進めることを想定している.
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