研究課題/領域番号 |
19K14710
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山田 敏史 島根大学, 学術研究院理工学系, 特任助教 (60792421)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ゲージ群を拡張した模型 / 超対称SO(10)大統一理論 / 陽子崩壊 / ニュートリノ振動におけるCP対称性の破れ |
研究実績の概要 |
SO(10)大統一理論がLeft-Right模型を内包することに基づき、主に研究(i),(ii)を行った。(i)超対称SO(10)大統一理論におけるHiggsino交換から生じる陽子崩壊(dimension-5陽子崩壊)について、中性K中間子+ミューオンへの分岐比と、荷電K中間子+ミューオンニュートリノへの分岐比との比の予言を行った論文を、学術誌PTEPに掲載した。同論文では、上述の分岐比の比が最大で0.6程度になること、ゆえに現在の実験的制限に抵触せずに、将来のハイパーカミオカンデ実験で両方のモードが検出されうること、を明らかにした。また、最小SU(5)大統一理論ではこの比は極めて小さいことから、両モードの探索が大統一理論の識別に繋がることを指摘した。(ii)超対称SO(10)大統一理論では、dimension-5陽子崩壊が現在の実験的制限に抵触しないためには、超対称粒子の質量をTeVスケールより遥かに大きくする必要がある。このことは、電弱スケールの「自然さ」に反する。そこで、超対称粒子の質量ではなく、SO(10)大統一理論の湯川結合行列の構造により、dimension-5陽子崩壊が抑制される可能性を追究した。今回は特に、Type2シーソー機構がニュートリノ微小質量の主要な寄与を与える場合について、dimension-5陽子崩壊が最も抑制される時に(湯川結合行列で決まる)ニュートリノ・ディラックCP位相δが-π/2<δ<π/2を満たすことを示した。このδの予言は、ニュートリノ振動測定により検証可能である。以上の研究成果をPTEPに掲載した。上記以外に、電子とミューオンの異常磁気モーメントの実験値と理論値のズレを同時に説明する新物理の論文と、右巻きニュートリノと結合する新たなヒッグス場を導入してニュートリノ微小質量を自然に説明する模型の現象論の論文を、PTEPに掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メインの研究課題である「超対称Left-Right模型に基づきstrong CP問題を解決する研究」については、まだ論文を発表していないが、関連する超対称SO(10)大統一理論について、「dimension-5陽子崩壊の異なるモードの分岐比の比の予言」、「dimension-5陽子崩壊を抑制する湯川結合行列の構造の探究と、それに基づくニュートリノ・ディラックCP位相の予言」という画期的な成果を挙げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
超対称SO(10)大統一理論における、dimension-5陽子崩壊を抑制する湯川結合行列の構造の研究を継続する。ニュートリノ微小質量が、Type-1シーソー機構の寄与も含んで一般的に与えられる場合等を考え、研究を一般化する。一方で、メインの課題である「超対称Left-Right模型に基づきstrong CP問題を解決する研究」の論文を発表し、学術誌に掲載することを目指す。また、ゲージ・ヒッグス統合理論の枠組みを利用してcomposite twin Higgs模型の解析を行い、小階層性問題を解決するとともに、同模型の実験的検証についての研究を行う。
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