超対称Left-Right模型を内包する超対称SO(10)大統一理論では、(他の超対称大統一理論と同じく)カラー荷を持つHiggs粒子の超対称パートナーが媒介する陽子崩壊(dimension-five陽子崩壊)が起き、その頻度は、超対称粒子の質量をTeVスケールより遥かに高くしない限り、現在の実験的制限を超過する。本研究は、繰り込み可能項のみから標準模型湯川結合を導出する「繰り込み可能超対称SO(10)大統一理論」において、湯川結合を与える繰り込み可能項のフレーバー構造によりdimension-five陽子崩壊が抑制される可能性を追究した。これらの繰り込み可能項をクォーク・荷電レプトン質量、小林益川行列、そして(SO(10)大統一理論にはシーソー機構が自然に備わっていることから)ニュートリノ振動のデータにより制限した上で数値解析を行い、dimension-five陽子崩壊が抑制されるフレーバー構造の存在を具体的に示した。この成果をまとめた論文をJHEPに掲載した。 超対称シーソー模型において、3世代右巻きニュートリノの超対称パートナーのうち2つがインフラトン、1つがカーバトンとして働く場合、最新の宇宙観測データと無矛盾な密度揺らぎが得られること、非熱的レプトジェネシスにより宇宙のバリオン数を説明できること、密度揺らぎのテンソル・スカラー比に理論的下限が付くことを示した。この成果をまとめた論文をJCAPに掲載した。 ニュートリノ混合角が大きいことから、「ニュートリノ微小質量はフレーバーについてランダムな結合項や質量項から導出される」という仮説を立てた。同仮説に基づき様々なニュートリノ微小質量生成機構を比較し、タイプ1シーソー機構の場合にニュートリノ微小質量二乗差の比の実験値が最も自然に再現されることを示した。この成果をまとめた論文をPTEPに掲載した。
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