研究課題/領域番号 |
19K14711
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
高浦 大雅 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究員 (70836858)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | QCD / リノーマロン / 高精度予言 |
研究実績の概要 |
QCDの理論予言を精密に与えることは素粒子物理の幅広い文脈で重要となる。本プロジェクトでは、摂動QCDをベースとして予言の高精度化を目指す。このためにはリノーマロンとして知られる摂動計算に現れる不可避な誤差に対処する必要がある。リノーマロン誤差はΛ_QCD^n/Q^n[Qはobservableの典型的スケール]という形をとるため低エネルギーの摂動計算の精度を悪くし、例えばbottomやcharm quarkの関わる物理量の予言精度に深刻な影響を与える。リノーマロン誤差は摂動論の拡張的枠組みである演算子積展開を用いることで理論上は克服可能と思われているが、現実的にこの誤差を消去するには摂動計算法の改善が必須である。特にリノーマロン誤差とこの誤差に影響を受けない「精確」な部分とに理論的に分離することが必要である。今年度はリノーマロン誤差を消去するための新たな摂動計算法を提唱した。この論文はJHEPで出版された。これにより例えばΛ_QCD^4/Q^4のリノーマロン誤差を消去し、理論予言の誤差をΛ_QCD^6/Q^6まで減らすための方法論が確立した。この手法の特徴はリノーマロン誤差の消去を理論的に精確に行うことができる点にある。またくりこみ群improvementとも相性が良い。また今年度は同様の目的を達成するための別法の開発にも取り組んだ。こちらに関してはletter版が現在査読中、本論文を準備中である。このようにQCDの摂動予言からリノーマロン誤差を除くための手法に関して大きな進展を得た。また複数の手法を用意できたことでより系統的な誤差評価を可能にできた同時に、リノーマロン除去に関する理論的な理解について多角的に提示できたものと考える。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的な手法について、当初の期待を超えて複数の手法を考案できた。一方で非摂動行列要素の決定にはまだ至っていないが、こちらの準備も順調に進んでいるため。
|
今後の研究の推進方策 |
QCD予言精度の実際的な向上を実現するために、開発した定式化を元に非摂動行列要素の決定に取り組む。またリノーマロン誤差の理論的な示唆についての考察や手法の更なる改善にも取り組む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス蔓延により、出張機会およびそれに伴う出費が予定より減じたため。
|