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2020 年度 実施状況報告書

ブラックホール磁気圏での電磁カスケード現象の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K14712
研究機関広島大学

研究代表者

木坂 将大  広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 助教 (10639107)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードブラックホール / 活動銀河中心核 / 高エネルギーガンマ線 / 粒子シミュレーション
研究実績の概要

ブラックホールから放出される相対論的ジェットの生成機構は宇宙物理学最大の謎の一つである. 本研究では, 特に相対論的ジェットへの物質注入機構に対してブラックホール近傍での電磁カスケード現象に注目し, 粒子の加速と生成過程を取り入れた一般相対論的プラズマ粒子シミュレーションコードを用いて, 相対論的ジェットの生成機構の解明を目指している.
1. ある準定常的に電磁カスケードを起こしている状態からブラックホール周囲の降着円盤からの放射に対するパラメータを変化させることで擬似的にフレアを起こさせ, その応答の特性を調べた. 様々なパラメータを変化させた結果として, ほとんどの場合は短い時間で変化後のパラメータの値に対応する準定常状態に遷移することがわかった. しかし, ブラックホール近傍を流れる電流を増加させた場合, プラズマが全体的に不足することで強い電場を誘起し, ごく短期間に限り1桁以上のガンマ線光度の増光が起こることがわかった. これらの結果は, 将来的に詳細なガンマ線フレアに対する観測データが得られた際に, そのフレアがどのような原因で発生したかに対する理論的解釈を与える上で重要となる.
2. 電磁カスケードに伴うガンマ線光度のパラメータ依存性の理解を目的として, シミュレーション結果を再現する解析的モデルを構築した. この結果, 計算コストの問題から調査が難しいパラメータ範囲に対するガンマ線光度や生成する粒子数に対する示唆を得ることができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度の主な目標は, 活動銀河核から観測される時間変動の激しいTeVガンマ線帯域の増光現象(フレア)の機構を明らかにすることである. ブラックホール近傍の降着円盤からの放射特性などのモデルパラメータの変化を取り入れることで, ガンマ線光度がどのように振る舞うかについての定量的な評価が得られた. また, 次年度の計算コードの拡張に向けて現在の数値結果を理解するための解析的モデルの構築により, 拡張する効果を解釈するための準備を整えており, 当初の予定通りの進展が達成できたと言える.

今後の研究の推進方策

これまでの計算の結果, 計算領域内で生成した粒子はジェットからの電波放射の観測データを説明するために要求される粒子数よりずっと少ない. ただし, ジェットからの電波の放射領域は数値計算領域よりずっと外側の領域である. 解析的な見積もりの結果, 計算領域の外側でも十分な粒子生成が起こりえることがわかった. 特に, これまで計算領域内では粒子生成に寄与しないとして無視していた曲率放射起源のガンマ線による粒子生成も, 外側では起こることが期待される. そこで, より広い空間領域でのガンマ線放射と粒子生成の計算を行う. 具体的には, これまでに得られた加速領域から放出される粒子と光子のエネルギー分布を初期条件としてガンマ線放射と粒子生成を考慮して粒子と光子の伝搬を計算する. これにより, 最終的な粒子と光子の個数とエネルギー分布が得られ, 観測データと詳細な比較が可能となる.
また, 粒子の運動に対する慣性力を考慮した計算を行う. これまでの計算で, 期待されるガンマ線光度に達するパラメータ範囲が非常に狭いことを明らかにした. ただし, もし加速電場を遮蔽する粒子の運動を阻害する力が働けば, ガンマ線光度が増加する可能性がある. 一つの可能性として, 磁力線に垂直成分の電場に起因する回転運動で現れる慣性力が挙げられる. そこで, 回転運動を取り入れた数値モデルを構築することを予定している.

次年度使用額が生じた理由

新型コロナウィルスの影響により、当初予定していた共同研究者との研究打ち合わせを延期させたため、次年度使用が生じた。次年度は延期した日程も含めて研究打ち合わせを行うことを予定しており、その旅費などに使用する計画である。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Tel Aviv University(イスラエル)

    • 国名
      イスラエル
    • 外国機関名
      Tel Aviv University
  • [国際共同研究] NASA Goddard Space Flight Center/Haverford College/California Institute of Technology(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      NASA Goddard Space Flight Center/Haverford College/California Institute of Technology
    • 他の機関数
      6
  • [国際共同研究] National Changhua Univ. of Education(中国)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      National Changhua Univ. of Education
  • [国際共同研究] Institut de Recherche en Astrophysique(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      Institut de Recherche en Astrophysique
  • [国際共同研究] Technical University of Denmark(デンマーク)

    • 国名
      デンマーク
    • 外国機関名
      Technical University of Denmark
  • [国際共同研究]

    • 他の国数
      2
  • [雑誌論文] Comprehensive Analysis of Magnetospheric Gaps around Kerr Black Holes Using 1D GRPIC Simulations2020

    • 著者名/発表者名
      Kisaka Shota、Levinson Amir、Toma Kenji
    • 雑誌名

      The Astrophysical Journal

      巻: 902 ページ: 80~80

    • DOI

      10.3847/1538-4357/abb46c

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Evolution of magnetic deformation in neutron star crust2020

    • 著者名/発表者名
      Kojima Yasufumi、Kisaka Shota、Fujisawa Kotaro
    • 雑誌名

      Monthly Notices of the Royal Astronomical Society

      巻: 502 ページ: 2097~2104

    • DOI

      10.1093/mnras/staa3489

    • 査読あり
  • [学会発表] かにパルサーの巨大電波パルスに伴うX線超過の理論モデル2021

    • 著者名/発表者名
      木坂将大, 榎戸輝揚, 寺澤敏夫, Chin-Ping Hu, 村田泰宏, 竹内央, 岳藤一宏, 関戸衛, 米倉覚則, 三澤浩昭, 土屋史紀, 青木貴弘, 徳丸宗利, 本間希樹, 亀谷收, 小山友明, 浅野勝晃, 柴田晋平, 田中周太, Zaven Arzoumanian, Keith C. Gendreau, and the NICER collaboration
    • 学会等名
      日本天文学会 2021年春季年会
  • [学会発表] Energy conversion efficiency in magnetospheric gaps around Kerr black holes2021

    • 著者名/発表者名
      Shota Kisaka
    • 学会等名
      Black Hole Astrophysics with VLBI: Multi-Wavelength and Multi-Messenger Era
    • 国際学会
  • [学会発表] 高速電波バーストのブレイクスルー2020

    • 著者名/発表者名
      木坂将大
    • 学会等名
      第33回 理論懇シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] GRPモデル再考2020

    • 著者名/発表者名
      木坂将大
    • 学会等名
      研究会「中性子星および関連現象~興味ある課題を検討しよう~」
  • [学会発表] Magnetospheric gaps around stellar mass black holes2020

    • 著者名/発表者名
      木坂将大
    • 学会等名
      高エネルギー宇宙物理学研究会2020
  • [学会発表] 粒子シミュレーションで探るブラックホール磁気圏での電磁カスケード現象2020

    • 著者名/発表者名
      木坂将大, Amir Levinson, 當真賢二, Benoit Cerutti
    • 学会等名
      日本天文学会 2020年秋季年会

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公開日: 2021-12-27  

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