相対論的速度で放出されるジェットと呼ばれるブラックホールからのプラズマ流の生成機構は宇宙物理学最大の謎の一つである。本研究では、特に相対論的ジェットへの物質注入機構としてブラックホール近傍での電磁カスケード現象に焦点を当てる。そこで起こる粒子の加速、高エネルギー電磁波放射とプラズマの生成過程を取り入れた一般相対論的プラズマ粒子シミュレーションコードを用いて、相対論的ジェットの生成機構の解明を目指している。 1. ブラックホール磁気圏を流れる電流の値に対して、高エネルギーガンマ線光度の明るさの極大値が存在することを明らかにした。ガンマ線は粒子の不足に伴い電場が発展して粒子加速が効率的になることで発生するが、電流が弱い場合は注入されるべき粒子数が少なくても構造を維持できることから粒子加速が効率的でなくなること、電流が十分強い場合は流れる電磁を維持するための粒子数が多く存在しており、この粒子が完全に不足して電場が十分に発展する前に粒子が注入されて電場が弱まることに起因する。この結果は、観測されているブラックホールからのガンマ線データからその磁気圏の状態を明らかにする上で非常に有用である。 2. 得られた数値シミュレーション結果を再現する準解析的モデルを構築した。これにより、様々なパラメータ範囲でのガンマ線の明るさなどを推定することが可能となった。このモデルを基にして、降着率が低いなどでまだ見つかっていない銀河系内の星質量の孤立ブラックホールの検出可能性を明らかにした。
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