研究課題/領域番号 |
19K14714
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柳生 慶 大阪大学, 理学研究科, 助教 (30825097)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 複合ヒッグス / CP対称性の破れ / 強結合 |
研究実績の概要 |
ヒッグスボソンが強結合のダイナミクスに由来する大局的対称性の自発的破れに伴う擬南部ゴールドストーンボソンであると同定するシナリオ(複合ヒッグス)において、特に強結合セクターにCP対称性を破る位相が導入されたときの低エネルギー有効理論への影響を前年度に引き続き研究した。具体的なセットアップとして、テラスケールにおいてSO(6)→SO(4)×SO(2)の破れを仮定し、低エネルギーでヒッグス2重項場を2個含む模型(2HDM)を予言するシナリオを考えた。この枠組みで強結合セクターにCP対称性の破れを導入すると、ヒッグス場とその共変微分を含む次元6演算子項から電弱Tパラメータに零でない寄与が与えられ、CPを破る位相の大きさに厳しい制限が与えられることが分かった。具体的にはトップ湯川結合の虚部の大きさを標準模型におけるその絶対値で割った値が、既存実験から許されるパラメータ領域で最大オーダー0.01程度となり、典型的なバリオン数生成のシナリオで要求されるサイズと比較して一桁程度小さくなることが分かった。したがって、Tパラメータによる制限が本質的に重要となることから、これを上手く避けられる新しいシナリオを考える必要があるという結論に至った。具体的なアイディアとして、大局的対称性の破れをSO(9)→SO(8)に拡張し、上記の次元6演算子項が現れないようなシナリオが考えられる。この場合においても低エネルギーでは2HDMが現れるが、SO(6)→SO(4)×SO(2)を基盤とするシナリオに対して、ヒッグスポテンシャルや湯川相互作用に現れるパラメータへの予言は大きく変わり得る。例えば、上記のSO(6)の模型ではフレーバーを破る中性カレントを禁止するために、湯川相互作用にある種のアラインメントを課す必要があるが、SO(9)の模型ではそのようなアラインメントが自然に導出されることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果は学術論文としてJHEPに掲載され、その結果は国際会議や国内の学会等で発表された。これに続く研究も現在進行中である。
|
今後の研究の推進方策 |
大局的対称性の破れとしてSO(9)→SO(8)を仮定する場合の複合ヒッグス模型を考え、低エネルギーでのヒッグスポテンシャル及び湯川相互作用に現れるパラメータを計算する。特に強結合セクターにCPを破る位相が含まれる際に、低エネルギーでのパラメータへの具体的な影響を調べる。また電弱バリオン数生成のシナリオへの応用を考える。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大予防のため、参加予定していた学会がオンライン開催に変更となり、予定していた旅費の支出がなくなったため。
|