研究課題/領域番号 |
19K14715
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
伊形 尚久 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 博士研究員 (40711487)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 一般相対論 / ブラックホール / シャドウ / 対称性 |
研究実績の概要 |
今年度は、臨界回転ブラックホールの任意の時空位置から放出された光子が無限遠に脱出するための必要十分条件を検討した。光源から放出された光子が無限遠に逃げるための必要条件は、半径方向の運動方程式で決まり、さらに極角方向の運動方程式から光子の運動が許される領域を限定されることを見出した。この2つの条件から、光子の保存量(衝突パラメータ)のパラメータ空間において、光子が無限遠に脱出できる可能性を示すパラメータ領域を2次元的に可視化する方法を提供することに成功した。本手法は、臨界回転ブラックホール時空の脱出可能領域を完全に同定する。ブラックホールの地平線付近の光源のみに着目した前年度までの結果を、任意の位置における光源に対する結果へと一般化したものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の成果は、臨界回転ブラックホールの光子の脱出条件を明らかにし、任意の位置にある光源から放射される遠方へと脱出可能な光子のパラメータ領域を完全に分類するものである。これは、前年度までに得られた結果を一般化したもので、臨界回転ブラックホールに対する分類が完成した。一連の結果に不可欠な要素は、研究開始の当初から継続して知見を得てきた球面光子軌道であり、これが光子の脱出、ひいてはホライズン近傍の観測可能性において、計画当初に予想された以上の果たしていることが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
本課題で得られた研究成果は、近年の近臨界ブラックホールのホライズン近傍の観測可能性に関する研究の発展の起点になっている。特に、近臨界ブラックホールのホライズンの近くを拡大する理論的手法が整備され、それを適用する研究が近年加速しており、これまで主に数値的手法で得られていた結果を解析的な手法で与えることができるようになりつつある。今後は、この手法を活用して、これまで得られた成果をより精密化すると共に、これを利用した物理的考察を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の対策として、学会・研究会などがキャンセル・延期・オンライン化されたなどの事情により、発表機会を延期する必要があるため。
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