前年度までにディープラーニング型ノイズ除去と重力波データ解析の融合の第一ステップとして,リカレントニューラルネットワークを用いたノイズ除去モデルの構築と評価を行っており,その際に,精度を高めようとして学習を深めると学習用データに過適合してしまうという事実を明らかにすることができていた。 最終年度にはその実績をもとに,ディープラーニングによって直接ノイズ除去波形を出力するのではなく,ノイズ除去のためのフィルタパラメータを出力する形の検討を行った。具体的には,通過帯域にリップルが生じないIIRフィルタであるバターワースフィルタを用いて,入力された観測データに対して最も適したカットオフ周波数を出力するニューラルネットワークを構成した。 ディープラーニングを実行するためのライブラリとして,PyTorchを選んだ。本研究では,フィルタをかけたあとの波形を使って損失関数を計算する必要があるので,PyTorchのフレームワークにおいてバターワースフィルタを実装する必要があった。バターワースフィルタの正当性を評価した後に,入出力や損失関数の計算部分を実装した。 Effective-One-Body法によって生成したIMR波形に対して,Advanced LIGOのデザイン感度に基づいて生成したノイズを加えたものを学習用データとして用い,最適なバンドパスフィルタのパラメータを推定するシミュレーションを行ったところ,ネットワークが出力する上側カットオフ周波数が理論的に得られる最大周波数と同様な質量依存性を持つことがわかり,理論と無矛盾な結果を得られることがわかった。
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