研究課題/領域番号 |
19K14718
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
白石 希典 香川高等専門学校, 一般教育科(高松キャンパス), 講師 (00803446)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | インフレーション / ゲージ場 / CMB / 銀河 / 重力波 / アクシオン / 非ガウス性 / 統計的非等方性 |
研究実績の概要 |
本研究では、素粒子固有の性質である「スピン」を指標として、(1)理論、(2)観測双方向からのアプローチによってインフレーションの構成粒子の特定を目指す。以下が本年度の研究成果である。 (1)に関して: 1. 銀河の密度場や速度場の相関関数を大角度スケールまで正確に解析する新たな手法を開発した。この手法を観測データに適用することによって、任意のスピンを持つ原始ゲージ場から生じる統計的非等方性の検定精度が大幅に改善することをフィッシャー行列解析から示唆した。2. 宇宙背景重力波の強度場と宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の温度場との相互相関関数がインフレーションシナリオの強力な診断ツールになることを世界に先駆けて提唱した。 (2)に関して: 1. 先行研究で開発したCMB3点相関関数の一般的なデータ解析手法をESA Planck衛星が得た温度場・Eモード偏光場の観測データに適用し、原始重力波(テンソルモード)のガウス性やパリティ対称性を前例のない精度で検定した。アクシオンやゲージ場の存在するインフレーションモデルはそれらの「破れ」を予言するが、検出されなかったため、アクシオンとゲージ場の結合定数に対して厳しい制約が得られた。また、原始重力ポテンシャル(スカラーモード)のガウス性検定も行い、ゲージ場のエネルギー密度に対する上限を得た。2. 国産の次世代CMB偏光観測衛星であるLiteBIRDのEMC対策に関する研究や、他の将来観測計画に関する提言などを行った。 上記の成果はすでに複数の論文にまとめ、世界に公表している。これらを今後の研究で発展させ、インフレーションの構成粒子に関する包括的理解を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、(1)の理論的研究のみを行う予定であったが、上記の通り、(1)も予定通り進展し、かつ、(2)の観測的研究の進展もあった。さらに、次年度以降に行うテーマについてもすでに研究を進めている。上記の進捗状況から、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
(1)に関しては、まず、スピン1のインフレーションモデルの現象論的研究を徹底的に行う。その後、高スピン場の存在する種々のモデルにおいて、予言されるCMB、銀河、中性水素21cm、背景重力波などの多点相関関数を計算し、その観測可能性を議論する。 (2)に関しては、(1)で理論予言した種々のモデルにおける信号を、CMBや銀河の最新観測データを用いて検証する。また、そのためのデータ解析手法を開発する。 各々のプロジェクトが完成次第、順次論文としてまとめ、世界に公表していく。また、関連する新たなプロジェクトの発掘にも努め、挑戦していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金が生じた状況: 新型コロナウイルス感染症の蔓延拡大の影響で、参加予定であった国際会議や研究協力者とのミーティングが全て中止・延期となり、それにかかる出張旅費が必要なくなった。 翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画: 当初の予定配分額分は、国内外の出張旅費と電子機器やソフトウェアの購入・維持費に充てる。今回生じた次年度使用額分は、大規模数値解析を実行するために必要なコンピュータの購入費に充てる。
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