研究課題/領域番号 |
19K14719
|
研究機関 | 都城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
阿部 裕悟 都城工業高等専門学校, 一般科目理科, 講師 (30792452)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 散乱振幅 / 高階微分重力理論 / S行列ユニタリー性 / 繰り込み可能性 / 量子重力理論 / 負ノルム理論 |
研究実績の概要 |
先行研究の、「量子理論の繰り込み可能性はツリーレベル近似でのユニタリー性(ツリーユニタリー性)と関連する」という示唆に基づいて、この関連性を負ノルム理論にまで拡張を試みている。 前年度に行われた、高階微分重力理論における重力粒子-物質粒子散乱過程によるS行列ユニタリー性と繰り込み可能性との対応に関しての計算結果から、ループ計算における発散項の処理についての新しい知見が得られた。ある理論のループ計算において発散項が生じる際に、有限個の相殺項で理論のすべての発散項を取り除くことができる理論を繰り込み可能であるといい、相殺項が無限個生じてしまう理論を繰り込み不可能であるという。本研究では、高階微分重力理論+スカラー粒子理論で解析を行い、ループ計算に必要な相殺項を含んだ計算と含まない計算との両方を比較し、「S行列ユニタリー性の解析は、量子理論における相殺項の有限性と関連する」という新しい予想も得られた。 これまでの本研究結果は、先行研究の示唆とも矛盾がなく、量子論の性質をツリーユニタリー性を用いて調べることが正当化される。さらに、重力粒子-重力粒子散乱におけるS行列ユニタリー性の解析を進めることで、我々が知り得た予想を精査し、理論の繰り込み可能性との対応の進展が期待される。 本研究成果を含む「量子散乱問題で探る重力理論」に関する査読付き論文を1編発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の(3)やや遅れている状況に関して、本年度の進捗により遅れを取り戻す予定であった。しかしながら、コロナウイルス流行の影響により、所属機関内での授業がWEB形態となり、エフォート負担率に大幅な変更が生じた。その結果、本年度分の研究進捗は順調に進めることが出来たが、昨年度分の遅れを取り戻すには至らなかった。 また、本年度の成果について、国内外の会議や研究会で発表を行い、本研究成果を広く発信する予定であったが、コロナウイルス流行の影響による所属機関要望により、予定していた研究会の中止と国内外旅行を中止とした。このことに関しては、次年度以降に研究発表機会を複数回設け、対応することを計画している。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度得られた成果から、重力粒子-重力粒子散乱におけるS行列ユニタリー性の解析においても同様の成果が期待できるため、最も中心的な計算を進めて結果を導き出すことを目指す。 申請時の計画よりも、進捗状況に遅れが生じているため、宇宙インフレーションへの適応に関しては計画を修正する。量子重力を含んだ標準模型ヒッグスポテンシャルについて、現象論研究のステップを探る。 また、S行列ユニタリー性の解析が量子論にどのような見地を与えるか、正ノルム理論の結果と負ノルム理論の結果を比較することで、新たなアイディアが生じたため、より具体的な研究の方向性についても議論する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の成果について、国内外の会議や研究会で発表を行い、本研究成果を広く発信する予定で経費申請を見積もったが、コロナウイルス流行の影響による所属機関要望により、予定していた研究会の中止と国内外旅行の中止、また、協力研究者や本研究との関連分野の研究者を招いての滞在費等も計上していたが、それらも全て中止となったために、次年度使用額が生じた。 コロナウイルスが終息し次第、次年度以降に本年度分の研究発表機会を複数回設け、旅費を計上することとする。 コロナウイルスが終息しない状況では、本年度と同様の状況が見込まれるが、オンライン会議での研究会参加を見据え、モニターやマイクなど、必要機材の購入を予定する。
|