研究課題/領域番号 |
19K14720
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
久徳 浩太郎 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30757125)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 宇宙物理 / 重力波 / 相対論 / ブラックホール / 中性子星 |
研究実績の概要 |
低質量のブラックホールと中性子星との連星の合体計算を多数実行し、合体時に放出される物質および合体直後に形成される降着円盤の質量を調べた。ブラックホールのスピンは今回は無視した。過去にはブラックホールの質量が小さければ潮汐破壊が激しく起こり、合体時に放出される物質も多くなると考えられていたが、実は後者は間違いであることを系統的に明らかにした。具体的には、具体的な値は状態方程式(あるいは中性子星の半径)に依存するが、放出される物質が最も多いのはブラックホールが中性子星よりも2-3倍程度重い場合であり、それより重くても軽くても放出される量は減ることがわかった。この傾向の物理的な説明は今後の課題であるが、同時期に行われた別グループの計算も同様の傾向を示唆しており、結果は妥当そうである。また、形成される降着円盤の質量もブラックホールの質量を下げればいくらでも増えるわけではなく、頭打ちになる傾向が見られた。これも新たな発見であり、物理的な説明が課題である。この研究を遂行している途中で、2019年4月25日に全質量3.4太陽質量の連星合体GW190425が発見されたことがLIGO-Virgoコラボレーションから報告された。これはまさに本研究で主眼に置いている連星中性子星とブラックホール・中性子星連星との峻別が難しい場合であったので、その報を受けてこの連星がブラックホール・中性子星連星であるかどうかを最新の知見を用いて議論した。このイベントでは重力波による位置決定精度が低く、電磁波の有益な観測が行えなかったために情報が不足しているが、将来的に位置決定精度が高い同様のイベントがあった場合、このイベントで実現された可視光で21等級までの観測ができれば峻別が可能な情報が得られる可能性が十分にあることを結論した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度からGW190425という目論見通りのイベントが発見され、研究成果を応用する機会に恵まれたため。複数台の重力波検出により高い位置決定精度が実現され、有意義な電磁波の観測も行われればもっと良かった。
|
今後の研究の推進方策 |
ブラックホールがスピンしている場合も視野に入れ、引き続き低質量のブラックホール・中性子星連星合体の研究を推進する。重力波・質量放出を計算し、観測に適用しやすい準解析的なモデルの導出を進める。また、結果の物理的な解釈も深めたい。昨今の情勢もあり、しばらく新しい重力波の観測は行われないと思われるが、今までの観測の成果は今後公表されるはずなので、それらについて適当なものがあれば結果を適用して起源天体の解釈を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
京都大学に異動し、計算機を設置できる環境が極めて限られるようになったため、当初計画の通りに複数の計算機を購入することはやめ、次年度に大型の計算機を一台購入することにした。京都大学の計算機環境を一部利用できており、研究に大きな支障はなかった。
|