研究課題
本研究の目的は「中性子星を作る物質は何か?それがどう進化するか?」を解き明かすことである。中性子星を作る物質は、ハドロン・クォークと荷電レプトンのゼロ温度極限・β平衡状態であり、主たる成分は中性子であると考えられている。しかし、実際には、冷却や降着などに応じて、準安定な物質も混在する可能性がある。そこで本研究では、中性子物質の準核統計平衡・元素合成計算、クォーク相形成の波面解析を行い、中性子星の表面付近や中心部分における素過程、物質組成と天体構造の共進化、観測への影響を包括的に解き明かす。本年度は、中性子星の誕生にあたる重力崩壊型超新星爆発に関する研究を中心に進め、学術論文3報(主著1報、共著2報)を発表した。主著論文としては、相対論的ブルックナーハートリーフォック理論に基づく多核種の状態方程式の計算を行った。既に計算済みである変分法に基づく状態方程式に比べて、対称核物質は柔らかく、中性子物質は硬い性質であり、超新星爆発シミュレーションにおいて重大な違いを生むことが予想される。それに関連して、国際学会発表4回(1回は招待講演)、国内学会2回(うち1回は招待講演)を行った。共著論文においては、ニュートリノ振動が超新星爆発シミュレーションに与える影響の解析や、重力波観測と無矛盾であり変分法に基づくハドロン状態方程式とNJL模型に基づくクォーク状態方程式をクロスオーバー相転移で繋ぐ中性子星物質の状態方程式の計算などを行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定にあった高温物質の状態方程式の計算が順調に進み、既に一報の論文を発表している。その上で研究計画を拡張し、クォークを含む状態方程式に関する学術論文を発表している。
研究計画の骨組みである準核統計平衡計算の完成を最優先に進める。最終的には、それら中性子星冷却計算に適用し、中性子表面における元素組成を明らかにする。
香港デモや新型コロナウイルスによる学会のキャンセルがあったため。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
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