研究課題/領域番号 |
19K14726
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸藤 亜寿紗 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 特任助教(研究) (20704399)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ニュートリノ / 二重ベータ崩壊 / 液体シンチレータ / 素粒子実験 |
研究実績の概要 |
ニュートリノを伴わない二重ベータ(0νββ)崩壊は、観測されればニュートリノの性質(マヨラナ性、質量、質量の階層構造)を明らかにできることから注目されており、世界中で様々な手法、崩壊核を用いて活発に実験が行われている。 本研究は、カムランド禅実験による、より高感度な0νββ崩壊の探索を目的としている。2019年1月に実験を開始したカムランド禅800は、約 750kg のキセノン (崩壊核136Xe、90%濃縮) を溶かした液体シンチレータを半径 1.9m のナイロン製バルーンに入れ、二重ベータ崩壊を観測している。 観測の背景事象の一つとして、宇宙線ミューオンの原子核破砕事象(特に10C)がある。カムランド禅800の前身実験であるカムランド禅400(2012-2016年稼働)では、これをミューオン・中性子・10Cの三重遅延同時計測によって除去していたが、本研究では、さらに高感度化を目指すため、新しい手法として、残存電荷が大きいミューオンを用いて、ミューオンが通った軌跡上で原子核破砕が起こった位置を特定し、その位置と10Cの位置との相関から除去する方法を取り入れた。また、原子核破砕事象の尤度関数を導入し、より最適な事象の選択を行っている。 カムランド禅400では他のバックグラウンド事象に比べて十分小さく評価の対象とされていなかった 8B太陽ニュートリノも、カムランド禅800では考慮しなければならない。この事象は全体積に分布し、遅延同時計測等の解析的 手法では取り除けないものであるため、より正確な事象数の見積もりが必要となる。原子核破砕事象の効率的な除去方法の確立により、いままで測定できていなかった0νββ崩壊のQ直付近でまで閾値を下げた測定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カムランド禅の観測の背景事象として、宇宙線ミューオンの原子核破砕事象がある。宇宙線ミューオンが液体シンチレータ中を通過すると、主成分である12Cを破砕し、様々な寿命の放射性崩壊核と大量の中性子を生成する。最も寄与が大きいのは10C(寿命27.8秒)で、過去の実験であるカムランド禅400では、宇宙線ミューオン・中性子・10Cの三重遅延同時計測によって除去されていた。カムランド禅800では、さらに高感度化を目指すため、新しい手法として、残存電荷が大きいミューオンを用いて、ミューオンが通った軌跡上で原子核破砕が起こった位置を特定し、その位置と10Cの位置との相関から除去する方法を取り入れた。また、原子核破砕事象の尤度関数を導入し、より最適な事象の選択を行っている。 カムランド禅400では他のバックグラウンド事象に比べて十分小さく評価の対象とされていなかった 8B太陽ニュートリノも、カムランド禅800では考慮しなければならない。この事象は全体積に分布し、遅延同時計測等の解析的手法では取り除けないものであるため、より正確な事象数の見積もりが必要となる。原子核破砕事象の効率的な除去方法の確立により、いままで測定できていなかった0νββ崩壊のQ直付近でまで閾値を下げた測定を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、背景事象に関する解析を進め、それぞれ論文としてまとめる。ハードウェアでは、計画通り位置・エネルギー較正装置を導入し、エネルギー再構成における位置依存性の不定性を減少させ、 また、エネルギースケールの高精度化を行う。これらを全てまとめて、カムランド禅800の結果を発表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析に注力し、使用額の大きいキャリブレーション装置開発を次年度にまわしたため。 また2-3月はコロナウイルスの影響により予定されていた出張がキャンセルされたことも影響している。
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