研究実績の概要 |
銀河系から地球に飛来する宇宙線のうち数十GeV 以下のエネルギーのものは太陽圏内において太陽磁場の変調を受ける。そのため地球における宇宙線強度の変動には、太陽活動の基本周期である11年周期のほか、太陽圏磁場の大規模構造の変化が反映される。そのほか、太陽フレアや超新星等の高エネルギー現象でも、突発的な宇宙線強度の増加が生じる。地球に飛来した宇宙線は大気中で核破砕反応を起こし炭素14(14C)を生成する。14Cは二酸化炭素として光合成により樹木に吸収される。従って、樹木年輪中の14Cの濃度は、その年輪が形成された年の宇宙線強度変動を反映するため、過去の太陽系、地球環境を調べる上で重要な情報となる。 近年、加速器質量分析装置(AMS)を用いた樹木単年輪中に含まれる14C濃度の高感度測定から、太陽活動が極端に低下した極小期と呼ばれる時期が度々存在していたことが明らかになってきた。17世紀に発生したマウンダー極小期では、地球環境にも多大な影響を及ぼしたことが知られており、過去に発生した他の極小期の太陽活動を詳細に調べることが、今後の極小期発生の予測を行う上で重要である。本研究では、山形大学に導入したAMS装置を用いて、古木1年輪毎の14C濃度を高精度に測定し、過去の宇宙線強度変動及び太陽活動の周期依存性を調べることを目的とする。 青森県下北半島で発見された下北埋没木(樹種:アスナロ, 年輪年代:西暦1329-1450年)について、西暦1368-1420年の53年輪を1年輪毎に14C濃度を測定し、シュペーラー極小期が始まる2サイクル前から11年周期が伸びていることを明らかにした。
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