研究課題
本研究は CERN COMPASS 国際共同研究が 2015, 2018 年に行った偏極ドレル・ヤン (DY) 測定データを解析し,標的陽子の横スピンに依存した構造,特に Sivers 関数と呼ばれる分布関数の情報を得ることが目的である。陽子構造の解析に標的偏極度の情報は不可欠であるため研究代表者が行った。偏極度解析は 2020 年度に最終結果を得て、2021 年に「日本のスピン物理学の展望」において報告した。偏極標的の研究開発、偏極度解析は論文としてまとめ、Nuclear Instruments and Methods A で出版した。DY データの解析では,すでに行っていた 2015 年の データ解析手法を改良して全データの解析を行った。モンテカルロシミュレーションで DY 過程が支配的な不変質量領域を 4.3 - 8.5 GeV/c^2 と見積もり、再構成したイベントの位置分布から偏極標的の領域を選択するなどをして可能な限り純粋な DY イベントのみを残し、それに対して標的偏極度に依存した角度分布の非対称度を抽出した。2021 年度後半にこの解析に目処が付き、 Sivers 関数に関係する非対称度約 0.05 を得た。理論的に Sivers 関数の符号は測定する物理過程が深非弾性散乱か DY かで反転すると予言されていたが、この結果は予言を支持しており、理論的な枠組みの正当性を確認することができた。これまでの結果は 2015 年のデータのみを用いていたため誤差の範囲で非対称度は 0 だったが、本研究によりサンプル数が 2 倍に増え統計誤差が抑えられたために有限の非対称度を得ることができた。これは他実験の結果もまとめて取り扱うグローバル解析で Sivers 関数を決定する際に大きな役割を果たすことになる。
すべて 2022 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research Section A: Accelerators, Spectrometers, Detectors and Associated Equipment
巻: 1025 ページ: 166069~166069
10.1016/j.nima.2021.166069
原子核研究
巻: 66suppl.1 ページ: 126~136