研究課題/領域番号 |
19K14732
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
櫻井 雄基 東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (50780847)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CMB / インフレーション / 宇宙物理 / 偏光変調器 / 半波長板 / 極低温 / ミリ波 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、偏光変調器の主要部である半波長板の極低温環境下における偏光特性を広帯域かつ高精度で測定することである。宇宙のインフレーションを探索するCMB偏光観測実験の高感度化のためには、半波長板の特に低温での偏光特性を十分に理解することが不可欠である。本研究では、半波長板の極低温環境下における偏光特性を広帯域かつ高精度で測定することを目的としている。 2年目である本年度は、昨年度構築したベクトルネットワークアナライザー(VNA)を用いたミリ波光学測定システムのさらなる最適化とクライオスタットと組み合わせた低温測定セットアップの構築を行った。 昨年度構築した測定システムでは、フリースペースに置いた各光学素子由来の定在波等による除去しきれない系統誤差が存在していた。また、50GHz以下の低周波では回折の影響が大きくなる。そこで、各素子のサイズ、形状、アライメントを再設計、最適化することで、高感度な測定を可能にした。さらに、直径600mmの光学素子まで測定できる常温回転ステージを導入し、実機サイズの光学素子の測定に着手した。 また、昨年度調達した部品を用いて、低温光学測定のためのクライオスタットの改造と光学測定システムの構築を行った。光学窓ありの状態で回転機構に設置した半波長板が20K程度の低温を維持できることを確認した。 次年度では常温、低温測定システムを使用した実際の半波長板の透過・反射率、変調効率の測定とデータ解析を行う。さらに、その結果をまとめ、論文の執筆を開始する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度では計画通りに常温光学測定システムの構築が完了、測定まで行えた。2年目である本年度では実際の試験測定と低温測定システムの完成を研究計画では予定していたが、感染症の影響により実際の現場での実験を行う時間が制限された経緯から、測定装置の完全な完成には至らなかった。しかしながら、すでに設計、部品調達等は完了しており、現場での実験も可能な状態であることから、次年度において十分補填できる軽度の遅れであると言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、低温光学測定システムの構築を完了し、低温高感度での半波長板の光学測定を実際に行う予定である。 本年度で光学窓を設置した状態で、測定対象を約20Kの低温を維持できることを確認した。次年度では、熱パスやフィルターを最適化することで、さらなる低温化を目指す。並行して、クライオスタットでの常温測定を行い、本年度で最適化した測定結果との整合性を検証する。 最終的に、低温でのヒーターを用いた透過率・反射率の温度依存性の測定と評価を行う。 次に、極低温回転機構に半波長板を搭載し、変調効率の測定と回転機構の振動、熱ゆらぎ由来の特性変化を検証する。これらのデータ解析を行い、最終的な測定結果をまとめ、国際学会での発表、及び論文の執筆を順次進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度で低温光学測定システムを完成させる予定であったが、現場での実験時間が制限されていたこと、物品の調達が困難であったことから次年度での一部調達が必要となった。次年度の使用計画としては、研究計画で購入予定だった物品・機会工作品を納期調整を行った上で、年度初期に順次調達していく予定である。
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