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2019 年度 実施状況報告書

Simons Observatory実験のための較正光源の研究開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K14734
研究機関東京大学

研究代表者

金子 大輔  東京大学, カブリ数物連携宇宙研究機構, 特任研究員 (60790342)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードミリ波較正装置 / CMB地上観測 / スティミュレーター / 積分球
研究実績の概要

研究題目に掲げるCMB地上観測計画、Simons Observatory(SO)の大望遠鏡(LAT)において、観測素子の特性を較正する装置、スティミュレーターについて、基礎的な研究開発をおこなった。
はじめにSO-LATでの使用に関して実験の仕様を元に検討を行った結果、参考機としたPOLARBEAR-2実験での採用されたものと同様の配置は最適ではないことが判明した。POLRAEBEAR-2よりも大型の望遠鏡と検出器であるSO-LATに対しては積分球型の光源とそれを一様に拡散させる光学ホーン一段の組み合わせが適切と判断し、以降の基礎設計はこれを基にしている。計画にある通り光源部の主要な構成部品であるヒーターと積分球を準備し、実験室で放射特性の基礎的な測定を開始した。最終的な判断はついていないが、修正点を発見し試験を継続している。
実験全体からの要求に関して、校正試験を全般を担当する協力者と議論している。現時点で観測素子の仕様が確定していないため、可能な限り広く対応できるよう調整をしている。特にサンプリング周波数は参考機よりも倍以上高速になる可能性があり、それに対応する変調機構を用意する必要がある。これに関しては高速域で回転数が安定したブラシレスモーターを採用し、実験室で機能を確認できた。
装置全体の機械設計は未完である。搭載予定のLAT副鏡構造体部分は特殊なカーボン部材を外注しており、その詳細設計が終了しておらず、寸法、重量の要求が確定していないためである。機械設計の担当者と議論を継続している。
取得できるデータの処理方法についても開発を進めている。光学信号とノイズを簡易にシミュレートするプログラムを作成し、校正結果を推定する方式について検討を行っている。SOで標準となるであろうデータ解析プラットフォームに、スティミュレーター用プログラムを準備している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

計画では装置全体の基本的な構成は本計画開始時すぐ決定される予想であったが、参考としたPOLARBEARとSO-LATの設計の違いをよく検討した結果、基本的な構成を見直すこととなった。決定的に変更が加わったのが光源部分であって、光学機器の一種、積分球を使用することになったが、この機器についての基礎的な知識が不足しており、購入を決定するまでに数週間の情報収集のための時間を要した。
必要な要素が実験室に揃って以降の実験室試験はおおむね順調に進行した。積分球と窒化ケイ素ヒーターを組み合わせた新しい光源部分の試験は、最終的な判断には至らなかったものの、装置の理解に重要なデータを取得できた。変調器部分の設計に見通しが付いたことも成果である。年度末の新型コロナ問題で実験室の作業が完全に停滞したことは影響として大きい。
設計の各項目について、想定よりも時間を必要としている。実験全体の仕様から決定される要素は多いが、SO-LAT計画全体として徐々に詳細が決定されてゆく段階にあるために、個別の較正機能に落とし込む段階で不定性が多くあり、仮定に頼らざるを得ない状況があったことも不可避な要因としてあったためである。
今年度中に各機械要素の個別の性能評価試験まで進めることはできたが、予定では試作機の組み立てが完了して総合的な試験まで進む計画であった。

今後の研究の推進方策

研究計画全体の方針として大きな変更点はない。計画全体をスライドさせて対応が可能である。
装置の完成までは所属する大学の実験室で引き続き開発をおこなう。2年目の前半までに実験室試験用プロトタイプの完成を目標とする。1年目修了時点では主要部品が寄せ集められている状態であったため、運転可能なシステムとして統合し、実験室で運用が可能な程度まで制御機構を充実させる。
2年目の後半に米国ペンシルバニア大で進められているLAT受信器の光学試験にこのプロトタイプを使用する予定である。ここでスティミュレーター自身の性能評価をおこない、望遠鏡に搭載する最終版の設計の参考とするのと同時に、受信器の光学系、観測素子の基礎特性(素子の応答係数と時定数)の測定を実施してLAT受信器全体の統合試験に寄与する。
機器の開発と並行してソフトウェアの用意も行う。SOのデータ処理プラットフォーム上に較正運転のシミュレーションと、実データ処理のためのプログラムを設置して、研究期間終了までに、実機を使用した場合の予想較正精度を計算できるようにすることを目標とする。
上記実験室試験と計算の結果を参考に、最終版のスティミュレーターを可能な限り完成に近づけるところまでを、修正した研究計画の最終目標とする。

次年度使用額が生じた理由

1年目の計画にあった、実験室プロトタイプの完成までは進めることができなかった。この差額は、プロトタイプ装置の構造体とケーブル、コネクタ等各種小物品のための予算として次年度に使用する予定である。

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公開日: 2021-01-27  

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