研究題目に掲げるCMB地上観測計画、Simons Observatory(SO)の大望遠鏡(LAT)において、検出器の較正をおこなう装置、スティミュレーターについて研究開発を行った。今年度の進捗は大まかに、(1)要求の確定、(2)詳細設計の決定、(3)製造、(4)試験運転である。当初目標は現地での性能試験を計画していたが、実験室試験の段階に留まった。 前年度の終了時点で、光源と変調装置の選定をする段階であった。今年度の初めに実験で必要な光源と変調装置の性能について、計画される他の検出器などのパラメータを仮定し、要求を確定した。それと平行して行われていた要素試験の結果、昨年度本案としていた積分球を利用する方式では要求を満たさない可能性が判明し、新たなヒーター直接光と光学ホーンを用いる方式を採用した。変調装置は予定通りブラシレスモーターを利用する方式で決定した。 続けて今年度夏頃、実験装置全体の機械設計を開始した。光源と変調装置を内蔵しうる最小限の較正で、高速回転する変調器を安定に保持できる形状とした。望遠鏡のカーボン構造体への搭載を考慮し、軽量であることも重視した設計で確定している。制御装置の設計と製造も課題であったが、具体的な設計製造は外部の研究者の協力を得ておこなった。基本的な編成は参考とした前実験の制御装置を踏襲しているが、SOLATの仕様を考慮し、全く新しい装置として完成している。 今年度の最終的な到達地点は、本較正装置と制御装置を結合し、運転環境を模擬した状態での運転試験である。各機能の基礎的な運転や監視が可能であるところは確認したが、詳細な性能の評価には至っていない。 今後は調整を繰り返しながら必要性能の達成を確認し、米国でこれから実施される検出器の総合試験でスティミュレーターを使用するべく準備を完了させる必要がある。チリ現地への搬出は2022年に予定されている。
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