研究課題/領域番号 |
19K14737
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研究機関 | 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
土川 雄介 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 博士研究員 (60796423)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | MA-PMT / 無機シンチレータ / X(17) |
研究実績の概要 |
本研究では重粒子線を用いた未知粒子探索の為のプロトタイプ検出器開発を行う。マルチアノード型光電子増倍管と無機シンチレータを用いたエネルギー並びに位置検出器としての研究開発を進めている。光電子増倍管の光電面は全体で約5cm角の大きさのものを使用する。初年度はまずシンチレーション光の広がりとそれに伴うマルチアノード型光電子増倍管の各ピクセルの応答について調査することで位置分解能の確認試験を行った。ピクセル化し、各々遮光した256粒の無機シンチレータと、5cm角の一枚のシンチレータについてリチウムの中性子吸収反応に伴うアルファ線等の荷電粒子によって発生したシンチレーション光のシンチレータ及び反射材を介した伝搬について基礎データを取得し、重心処理等のオフライン解析による位置分解能の評価を行った。電子やガンマ線がシンチレータ内を走行し、その軌跡上に多くの光源を持つ場合と比較して、発光点はほぼ点光源であることが期待されるため、開発の基礎データとして有意義である。位置分解能に関して当初目標の分解能が得られたことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マルチアノード型光電子増倍管のピクセル応答メカニズムの調査を開始し、重心処理等の解析的なアルゴリズムの確立に向けて、解析を行っている。3mm角のピクセルサイズを持つマルチアノード型光電子増倍管の応答から重心計算を用いて位置分解能が0.7mm程度まで向上することを確認した。重心処理アルゴリズムはさらに向上する余地があり、これについては並行して別途研究を続けるが、本研究においてはこの段階で十分な性能であると結論付けた。
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今後の研究の推進方策 |
現在遂行している調査を続けると共に、エネルギー分解能の確認、評価と、シンチレータの性能評価を行う。また本研究を超えて最終的に見込む実験像である、複数の光電子増倍管-シンチレータ対によるカロリメータ化の検証に向けて、二対での測定を行う予定である。ただしCovid-19の影響により計画に多少の変更が伴う可能性が出てきている。特に実験のためのビームタイム獲得に関して、電子ビームの使用が難しい場合は手近な量子ビームを用いて類似した実験、測定を行う。 本研究はハンガリーの研究グループによって提唱されたベリリウム-8の励起状態からの脱励起時に発生する未知粒子の探索、検証を目的としているが、研究開始前後に同グループによってヘリウム-4に関しても同様の報告がなされた。これは本研究の計画調書に記載した通り、比較的エネルギー準位の高い励起状態を持つベリリウム以外の元素による研究の重要性を後押しするものであり、現在日本原子力研究開発機構タンデム加速器等の施設における追従実験を検討している。主にデータ収集率の観点から本研究の枠内のみでの最終的な物理データ取得は困難であることが予想されるが、測定システムの検証としてのテスト実験を行いたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当研究ではエネルギー、時間及び粒子の入射位置測定の為に、電荷積分型エネルギー測定及び時間測定モジュールとマルチアノード型光電子増倍管を使用する必要があるが、予算の都合上、一年度にADC,TDCモジュールを共にそろえることが困難であった。比較的安価で購入可能な代替モジュールの検討を続けたが、残念ながら要求性能を満たすものはなかったため、初年度における基礎データ収集については、位置分解能の検証に集中し、所属機関所有のモジュール等を借用することで実行した。次年度使用額については上記モジュール群とそれに付随するデータ収集用周辺機器やモジュール、また2つ目の光電子増倍管の購入に充当する。
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