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2019 年度 実施状況報告書

トリウム229極低励起エネルギー準位観測のための高密度トリウム標的の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K14740
研究機関岡山大学

研究代表者

平木 貴宏  岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特任助教 (40791223)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワード原子核実験 / トリウム229 / 極低エネルギー準位
研究実績の概要

原子核の励起エネルギーは通常keVからMeVのスケールである。その一方、トリウム同位体の1つ229Thは、第一励起準位が8eV程度と原子核の中で最低で、エネルギースケールが真空紫外領域に対応するため、この準位は真空紫外レーザーにより励起することが原子核の中で唯一可能である。しかし、第一励起準位へのレーザー励起や、そこからの脱励起光の観測を試みる実験が行われてきたが、未だにそれらに成功した例はない。本研究では核共鳴散乱を用いた独自の手法を用いて第一励起状態からの脱励起光を観測し、励起エネルギーや第一励起準位の寿命といった性質を決定することが目標である。具体的には、大強度放射光施設Spring-8の単色X線バンチビームを用いて229Thを第二励起状態(29.19 keV)に励起させ、それが脱励起することで第一励起状態の229Thを生成する。
この真空紫外光測定実験では以下の条件を満たすトリウム標的が必要になる。(1)標的が真空紫外領域(~8eV)の光に対して透過度があること。(2)内部転換による脱励起過程が起きないようにするため229Thが1価以上のイオンの状態で存在していること。(3)トリウムは核燃料物質であるため、外部への漏れがないこと。初年度は229ThをドープしたCaF2結晶にX線ビームを照射して第一励起準位を生成し、そこから脱励起する真空紫外光を観測する実験を行った。セットアップの改良を重ねながら3回のビームタイムで観測を行ったが第一励起準位からの有意な信号は観測されなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

真空紫外光探索実験のセットアップをほぼ完成させ、真空紫外光探索実験を行った。
また分光器を用いて結晶から放出される背景事象となる成分の光について知見を得た。

今後の研究の推進方策

第一励起準位からの真空紫外光が観測できなかった主な要因はCaF2結晶にドープされている229Thの量が少なく、統計が不足することであった。次年度はよりドープ量の多いCaF2結晶やLiSAFと呼ばれる別の結晶を用いて真空紫外光探索実験を行う見込みである。

次年度使用額が生じた理由

本年度はほぼ予算を使い切った。残金は消耗品購入などに使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] X-ray pumping of the 229Th nuclear clock isomer2019

    • 著者名/発表者名
      Masuda Takahiko、Yoshimi Akihiro、Hiraki Takahiro、Koji Yoshimura et al.
    • 雑誌名

      Nature

      巻: 573 ページ: 238~242

    • DOI

      https://doi.org/10.1038/s41586-019-1542-3

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] トリウム229原子核異性体からの真空紫外光観測の現状2019

    • 著者名/発表者名
      増田孝彦
    • 学会等名
      日本物理学会
  • [学会発表] 核共鳴散乱を利用した原子核時計の開発2019

    • 著者名/発表者名
      吉見彰洋
    • 学会等名
      核共鳴散乱研究会
  • [学会発表] Production of the 229Th nuclear clock isomer with brilliant X-ray2019

    • 著者名/発表者名
      吉見彰洋
    • 学会等名
      INPC2019
  • [学会発表] Towards the spectroscopy of 229Th nuclear clock transition using Nuclear Resonant Scattering2019

    • 著者名/発表者名
      吉見彰洋
    • 学会等名
      DICP Symposium

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公開日: 2021-01-27  

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