研究課題/領域番号 |
19K14741
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
原 秀明 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 特別契約職員(助教) (70737311)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 素粒子実験 / 原子・分子物理 / 量子エレクトロニクス |
研究実績の概要 |
本研究では、ポジトロニウムの長寿命状態へのレーザー励起を行い、その遷移周波数を測定するための装置開発を行う。ポジトロニウムはレプトンのみから構成されるため、エネルギー準位の理論計算の不確かさが小さく、精密測定を利用したQEDの検証に適している。ポジトロニウムの寿命は基底状態では非常に短い一方、励起状態では主量子数nに対してn^3の依存性を持ち、寿命が長くなる。ポジトロニウムの励起状態は、パリティ対称性の破れの精密測定に応用できる可能性もある。 本研究では、(n=1)3S1状態から(n=3)3S1状態へのレーザー励起のための装置開発を行う予定である。分光実験では、波長410nmのレーザー光を用いて(n=1)3S1状態から(n=3)3S1状態への二光子励起を行い、(n=2)3P状態へ脱励起する波長1312nmの光を検出する。波長410nmの励起光は、波長820nmの光の2倍波を高フィネス共振器に結合させて、光強度を増幅させる。共振器に結合させる410nm光のパワーは1W程度を目標としている。このパワーは、第二高調波発生で得られるパワーとしては比較的高い。そこで本研究ではまず、波長約400nmの高出力かつ安定な第二高調波発生装置を開発することにした。市販の波長約800nmのレーザー光を非線形光学結晶を設置した共振器に入射した結果、400mW以上の第二高調波を生成することができた。当初の目標には届いていないが、これは基本波のパワーを増大することで解決することが可能である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポジトロニウムの励起では、発生するポジトロニウムの数が少ないので、高出力の励起光が必要である。そのためには、高出力かつ安定な第二高調波発生装置の開発が必要である。初年度において、装置開発に関して知見を得ることができたので、本実験に必要な励起光作成において活かすことができる。装置開発に関する本研究の目標の一つを初年度に達成することができたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
将来の分光実験では、(n=3)3S1状態への励起実験を行うが、まずは先行研究で観測されている(n=2)3S1状態への励起から始める。この励起には、波長486nmの二光子励起が必要であり。今後は、486nm光生成に必要な波長972nmの安定光源の開発から進める。干渉フィルターを用いて外部共振器を作成し、その安定度の評価等を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
外部共振器型半導体レーザー作成のために、初年度使用額の一部を残した。今後は、実験に使用する他の光学部品や電子部品、検出器の購入、学会参加のための旅費等に使用していく。
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