研究課題
本研究の最終目的は,発展途上の電子飛跡型半導体コンプトンカメラを実現させることである。研究代表者が研究開発を進めてきた「イベント駆動型SOIPIX」を用いることで,少数のガンマ線検出で到来方向を決定することが可能となり,カメラとしての性能が大きく飛躍する。本研究課題では,CPU組み込みFPGAによるオンボードデータ処理を実装することにより,課題であるリアルタイム性を躍進させる手法の研究開発を進める。初年度は,下記の成果を得た。1)CPU組み込みFPGA「Zynq」搭載評価基板の準備とデータ処理アルゴリズムの実装検討:実際にCPU組み込みFPGAによるZynq搭載評価基板を準備した。それを用いてデータ処理アルゴリズムを実装するための検討を進めた。そして,実際に動作させていくために必要な課題要素の洗い出しを進めた。2)ガンマ線イメージングのためのセンサ「イベント駆動SOIPIX」の研究開発:本研究はガンマ線リアルタイムイメージングのための手法の研究を目的とするが,実機による評価も重要なところである。イベント駆動型SOIPIXの新しい大面積素子,そして,新しいセンサ構造の素子のプロトタイプを評価し,問題なく正常に動作し性能が向上していることを確認した。さらに,共に常温で動作させることができ,コンプトンカメラとして稼働させるために必要な条件も達成することができた。これらの研究成果は,日本物理学会や国際学会で発表し,また,論文の出版も行なった。
2: おおむね順調に進展している
CPU組み込みFPGAであるZynq搭載評価基板の準備とデータ処理アルゴリズムを実装していくための検討を進めることができた。また,ガンマ線イメージングのためのセンサであるイベント駆動SOIPIXの大面積素子の評価試験を進め,正常に動作することが確認できた。新しいセンサ構造のプロトタイプの開発と評価試験も進み,測定性能が向上した。共に常温で動作させることができ,コンプトンカメラとして稼働させるために必要な条件も達成することができた。これらにより,ガンマ線リアルタイムイメージングのデータ処理手法を研究する準備を整った。よって,計画を遂行する上で順調な進展があったと言える。
今後は,Geant4シミュレーションを進めて,コンプトン散乱による反跳電子の方向ベクトル決定精度を向上させるためのデータ処理モデルの検討と構築を進めていく。また,CPU組み込みFPGAであるZynq搭載評価基板を用いて,実機によるデータ処理アルゴリズムの検討と構築を進めていく。そして,イベント駆動型SOIPIXの実機測定データにより,処理モデルの評価を行う。これらにより,ガンマ線リアルタイムイメージングの手法研究を進めていく。
当初予定していた評価基板の購入に一部変更があったため,次年度使用額が生じた。次年度に購入予定だった評価基板への使用分を減らすことで調整できるので,当初申請した使用計画への支障はない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 5件)
Journal of Instrumentation
巻: 15 ページ: C02010
10.1088/1748-0221/15/02/C02010
巻: 14 ページ: C06005
10.1088/1748-0221/14/06/C06005
巻: 14 ページ: C10023
10.1088/1748-0221/14/10/C10023